「儲かりまっか」「ぼちぼちでんなあ」
お馴染み、大阪人独特の挨拶だ。“ボケ”と“つっこみ”で会話が成り立つとされる大阪にはコミュニケーションの達人がわんさかいる。もっとも、これは今流行のロジカル・コミュニケーションなどではなく、あくまで普段のコミュニケーション力。つまり「雑談力」のことだ。
そのせいだろうか、10万人あたりのうつ患者数をみると、東京都(867人)や神奈川県(1081人)などに比べ、大阪は680人と少ない(厚生労働省調査)。たしかに、店先で「負けてえな」とねばり、電車で見知らぬ人に「飴ちゃん、いらん?」などと勧めている大阪のおばちゃんたちは、なんだかうつとは無縁な人々に思える。
「雑談力」の高い人は、うつへの抵抗力が強い――こう主張するのは東京メンタルヘルスアカデミーの武藤清栄所長だ。
「職場の人間関係を潤滑にするには、日頃のちょっとした会話が不可欠。『おはようございます。昨夜は大雨でしたけど、無事に帰れましたか』『君のところのお嬢さん、何年生だっけ?』。そんな何気ない一言で、相手の気心がわかって、仕事がしやすくなるものです。
ところが、最近は自己完結型のワークスタイルが広がったために、雑談をする機会が減っている。おまけに終身雇用や年功序列の崩壊で、職場の仲間形成における“伝統的な共同体”が消失してしまいました。そのために、コミュニケーション不全による障害が急激に増えているのです」
たとえば、こんなシーンにあなたも遭遇したことはないだろうか。