しかし、MWCにおける彼らのプレゼンスは、端末だけではない。MWCはもともと、端末だけでなく通信機器や通信事業者の祭典でもある。実際、エリクソン、ノキア、そしてファーウェイといった、グローバル市場で通信機器をリードするベンダーは、商談スペースも兼ねた超大型のブースを毎年設置しているし、MWC期間中はバルセロナの町中も彼らのロゴを貼り付けた招待客向けのリムジンが大挙して走り回る。

 その通信機器分野でも、彼らはエリクソンなどの第一人者に負けない存在感を示している。たとえばMWCを控えた2月には、NTTドコモの第5世代移動通信方式(以下5G)の実験協力パートナーに、同社が名を連ねることになった(参照:NTTドコモのプレスリリース)。先行して実験に取り組んでいた国内外ベンダーに後発として参加するものだが、マルチユーザMIMOや多元接続の高度化に関する実験等、以前から彼らが得意とするTDD技術を活かした役割を担っている。

 日本を含む米国の同盟国では、国家安全保障の観点から、ファーウェイを筆頭とする中国ベンダーへの警戒感がいまだ根強い。一方で、巨大市場を背景とした価格競争力だけでなく、技術力のあるベンダーとして、中国勢を無視することはもはや難しい。そうした「グローバル市場の現実」が垣間見えるのも、MWCならではの風景である。

今年は「インフラの年」?

 MWCは端末、通信機器、サービス、プラットフォーム、周辺機器、デバイス、そして最近ではアプリも取り込みつつある、モバイル産業のイベントである。出展者も、特に常連と言えるような事業者たちは、その年々の勢いに応じて、毎年趣向を凝らした展示や発表を行っている。

 またMWCは単なるイベントではなく、実際に商談が活発に行われ、ここから産業のトレンドが生まれることもしばしばある。実際、一般来場者が立ち入れるスペースは全体の半分強くらいで、「奥の院」たる各社のホスピタリティスイートや会場近くのホテル等が、本当のビジネスの現場でもある。

 MWCを毎年定点観測していれば、今年は誰が元気なのか(元気ではないのか)、例年に比べてどのような変化が生じているのか(生じていないのか)、ということが感じ取れる。そしてそれは、世界的なモバイルトレンドを肌で感じるということでもある。

世界的なスマホ販売不振を経たサムスンの成熟エリクソンのハンス・ヴェストベリCEOのプレゼンテーション Photo by Tatsuya Kurosaka

 そうした視点で今回のMWCを振り返ると、今年は「インフラの年」だったように思える。筆者の好みを言っているのではなく、MWC全体を見渡してみての所感だ。

 まず、エリクソン、ノキア、ファーウェイというインフラ主要3社の足並みが概ね揃った、という印象が残った。詳細は次回以降に触れるが、キーワードは「インフラのソフトウェア化」「現実主義」「見えてきた5G」である。この3社が概ね同じコンセプトで揃ったということは、インフラに関する世界的なトレンドはほぼ一つにまとまった、ということである。