福岡県前原(まえばる)市郊外にある南風台・美咲が丘団地。「世界最大の水素タウン」として、150世帯(同団地全体は約1900世帯)による「定置型・固体高分子形燃料電池(PEFC)の社会実証」が行われている。

 人口6万8099人の福岡県前原(まえばる)市。その郊外にある南風台・美咲が丘団地。九州大学「伊都キャンバス」まで車で10分程のこの地がいま、世界の注目を集めている。「世界最大の水素タウン」として、150世帯(同団地全体は約1900世帯)による「定置型・固体高分子形燃料電池(PEFC)の社会実証」が行われているのだ。

 なんとも仰々しいお題目だが、同地を訪れてみると、東京や大阪の郊外にあるようなごく普通の新興住宅地だ。そのなかの一軒、これまで何度もマスコミ取材を受けているという、伊藤洋介さん宅にお邪魔した。伊藤さんは2世帯5人暮らし、12年前に島根県浜田市から転居した。

 「最近は、(燃料電池のことなど)全然気にしないな。元々環境には興味はあった。導入当初は家族も面白がって、モニター画面で、電気の量が上がったの下がったと騒いでおったけどな。だが、孫はいまでも、テレビを見終わったらコンセントを抜くとか、エコな意識は続いているようだ」。

伊藤洋介さん(写真)宅の玄関脇にある「ENE・FARM」燃料電池本体の上には、サボテンの鉢植えが置かれていた。「自然体で使っておるから」と、伊藤さんは笑う。

 現地の実情について、「福岡水素タウン前原事務所」の属(さっか)健氏、北村典子氏に詳しく説明して頂いた。彼らは同地でプロパンガス販売を行っている西部(さいぶ)ガスエネルギーの営業部・燃料電池・ソーラープロジェクトグループに勤務している。