静岡県内で実施された新型プレリュードの公道試乗会にて静岡県内で実施された新型プレリュードの公道試乗会にて Photo by Kenji Momota

6代目となったホンダ新型「プレリュード」は9月5日の発売以来約1カ月で、ホンダが販売目標としていた台数の約8倍となる2400台に達し、一部販売店では受注をストップした。そう聞くと順調な滑り出しのように感じるが、実際のところはどうなのか。そもそもなぜ、ホンダがプレリュードというモデル名を復活させる必要があったのだろうか。ここ数年間のホンダへの取材を通じて、その理由をひもとく。(ジャーナリスト 桃田健史)

なぜ今、新型「プレリュード」復活なのか

「どうしてこのタイミングなのか? 教えてほしい」

 ホンダが10月初旬に静岡県内で実施した新型「プレリュード」の報道陣向け公道試乗会に参加していた自動車メディア関係者が、筆者に対してそう質問した。

 彼はホンダ関係者らに同じ質問をしたが、彼が納得できる答えが返ってこなかったからだという。

 一般的に自動車メーカーが実施する報道陣向け試乗会では、参加する担当技術領域が細かく分かれており、そのほかに営業、マーケティング、デザイン、商品企画など担当部門関係者も参加することから、メーカー側が想定問答集を用意しているものだ。

 その上で、前述の質問は新型プレリュードの「本質をつく」ものであるはずだが、どうやらホンダ側が対外的に明確な回答をすることは難しかったようだ。なぜなら、「どうしてこのタイミングなのか」という問いに対する回答の要素が多岐にわたり、それらが複雑に絡みあっているからだ。

 筆者はホンダの次世代技術や経営方針などについて各種会見や方針説明会などでウオッチしており、直近ではプレリュードを含む電動化戦略について栃木県や北海道のホンダ関連施設でプロトタイプを含む各種モデルに試乗し、開発部門幹部らと意見交換している。

 こうした取材体験があり、さらに今回の公道試乗会に参加して、「ホンダがこのタイミングでプレリュードを発売した理由」を理解できた。

 それほどまでに、プレリュード登場の背景は複雑だと言えるだろう。

 プレリュードの商品コンセプト「アンリミテッド・グライド~どこまでも行きたくなる気持ちよさ×非日常のときめき」は、あくまでも商品そのものに対するイメージであり、それだけでは「なぜ、このタイミングで登場したのか?」という理由は読み解けない。