新生銀行が急転直下の社長交代を決めた。現社長の健康問題に端を発した予期せぬトップ交代の裏には、続投か交代かで二転三転していた苦しい事情があった。緊急で引き継ぐことになった新社長には、社内の求心力確保に、金融庁が突き付けた三つの“問題”への回答、公的資金の返済と、重責がのしかかる。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)

「社長の予定を再調整してほしい」。今年2月上旬、新生銀行では当麻茂樹社長が関わる予定を白紙に戻していた。本人が体調不良で入院してしまったためだ。そして、そのまま1カ月弱もの間、トップが不在という異例の事態が続いた。

 66歳という年齢もあり、人知れず社長を続けるか迷う時期もあったという当麻社長。そのため、今回の体調悪化を「交代せよ」という天命と受け止め、療養中に51歳の工藤英之常務執行役員を後継に指名したという。6月の株主総会で正式決定すれば、15歳という大幅なトップ若返りが実現する。

社長交代の記者会見の場で握手を交わす新生銀行の当麻茂樹社長(66歳。左)と、次期社長の指名を受けた工藤英之常務執行役員(51歳。右)
Photo:JIJI

 ただ、ここに至るまでの過程では「舞台裏で金融庁の思惑が揺れ動いていた」と、事情に詳しい金融関係者は明かす。

 金融庁は昨年末から今年1月にかけて新生銀へ検査に入った。そして、「三つの問題を突き付けた」(新生銀幹部)。(1)独自のビジネスモデルの未確立、(2)ガバナンス体制の不備、(3)システムの脆弱性だ。それらは単なる問題提起にとどまらず、改善案について銀行法に基づく報告を求めるほど厳しいものだった。

 金融庁による当麻社長在任5年間の総括はこうだ。金融危機後、証券化商品や欧州向けの投資、不動産関連などの損失によって2期合計で約2800億円もの赤字を垂れ流していた中、2010年4月に社長へ就任。「沈みかけの船を水面に浮上させたまでは良かった」(金融庁幹部)。ただ、「その後に立てたV字回復計画の方は結果が伴っていない」(同)。

 りそなホールディングスとあおぞら銀行の公的資金完済が秒読み段階に入った今、同じ注入行の中で取り残された新生銀へのいら立ちを金融庁は抱えていた。

 そのため、直近の検査とほぼ同じタイミングである昨年末には、新生銀の大株主であるJ・クリストファー・フラワーズ氏と金融庁の間で、「当麻社長交代の合意がなされていた」(前出の金融関係者)という。そして、後継候補をリストアップして選定まで進めていたのだ。

 ところが、今年に入って考えが一転。現在の第2次中期経営計画が終わる16年3月まであと1年、当麻社長の続投という判断へと手のひらを返したという。

 けれども、方針転換した直後に今度は当麻社長が病で倒れてしまう。そこで再び交代へかじを切るという二転三転の社長交代劇だったのだ。