春、出会いと別れの季節。送別会や歓迎会、花見などイベント目白押しの時期であるが、大手企業を中心に今年からもう一つ風物詩が加わった。
3月1日、2016年度の大卒予定者を採用するための企業広報活動がスタート。政府の要請を受けた経団連が倫理憲章を改定し、従来の12月1日から3ヵ月遅れての開始となったのだ。企業としても、新たな採用スケジュールに合わせるべく、さまざまな対応に追われている。東京では今週末頃までが桜の見頃になっているが、「こっちは花見どころじゃないんだよ」という採用担当者の呪詛の声も聞こえてきそうだ。
それにしても、バブル崩壊後の就職氷河期やリーマンショック以降の世界的不況の中で就職活動を行った人たちからすると、今年や来年就職する若者たちがうらやましく見えるのではないだろうか。3月20日、厚生労働省・文部科学省が共同で発表した2015年3月大卒予定者の就職内定率は2月1日現在で86.7%と7年ぶりの水準に回復。同27日に厚労省が発表した有効求人倍率は1.15倍。月次の数値で見ると、1992年3月以来の高水準だ。
さらに、今年の春闘では大企業の多くが賃上げに応じた。中小企業や地方の企業にまで波及するかは今後も注視しなければいけないが、就職活動に取り組む若者たちにとっては希望の光に見えていることだろう。
実はコンサルより高給取り?
薬局・ドラックストアが初任給トップ業界
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さて、そこで気になるのは今年新卒で入社した彼らがもらう予定の給与。「どれだけ条件が悪くても、無職よりはマシ。とにかく就職できさえすればいい」という地獄を経験した就職氷河期世代に比べても、格段に状況がよくなったなかで就活をした彼らのことだ。じっくり選んで、よりよい条件のところを見定めてやろうというマインドの学生も増えているに違いない。
そうなると企業側としても、優秀な人材確保のために、あの手この手を尽くさなければいけない。そこにはもちろん初任給アップも含まれる。実際、この春に初任給の引き上げを発表した企業は多い。野村ホールディングス(引き上げ後は23万2300円)、大和証券グループ本社(同23万)などの証券系、また鳥取銀行、山陰合同銀行、佐賀銀行(いずれも同20万5000円)などの地方銀行も初任給を引き上げたとして、ニュースなどで取り上げられている。