世界的な論争を巻き起こした『環境危機をあおってはいけない』の著者であり、環境保護主義者に懐疑的な論陣を張ることで知られるコペンハーゲン合意センターのビョルン・ロンボルグ所長は、風力や太陽エネルギーなどの代替エネルギーの可能性について極めて冷ややかに見ている。彼からすれば、風力発電の普及で礼賛されるデンマークは、世界各国が従うべき模範ではない。
ビョルン・ロンボルグ(Bjorn Lomborg) コペンハーゲン合意センター所長 著書『The Skeptical Environmentalist(邦題:環境危機をあおってはいけない)』『Cool It(邦題:地球と一緒に頭も冷やせ!)』は日本でも話題に。 |
地球温暖化と戦うために唯一不足している必須要素は、意志の力と政治的な合意である──これは危険な誤解である。実際には、技術的に非常に高いハードルが存在するのだ。化石燃料依存に終止符を打つには、世界のエネルギーシステムを完全に転換しなければならないのである。
代替エネルギーはいずれも、本格的に化石燃料に太刀打ちするには効率が低過ぎる。原子力を除けば(原子力はいまだに化石燃料よりもそうとうに高コストだ)、既知の代替エネルギー候補はすべてそうとうの研究開発を必要としているのである。
考えてもみよう──恐ろしく馬鹿げた事実なのだが、CO2削減という大義を推進していくための根拠とされている研究は、「技術的なブレークスルーが自然に起きる」と素朴に想定している経済モデルを利用しているのだ。現在、いわゆる「グリーンエネルギー」源の開発に注がれる資金は、世界全体で年間わずか20億ドル。こんな自己満足なやり方では、必要なブレークスルーはとうてい間に合わないだろう。
その場合、各国政府は効果的な代替エネルギーもないまま、課税・排出権取引制度を利用して、CO2排出量の削減に努めることになる。これでは将来の気候変動に対して実質的になんの効果もない。その一方で、短期的には経済成長に大きなダメージが生じ、貧困に苦しむ人びとは増え、この地球は、本来は可能であったよりもはるかに暗い場所になってしまうだろう。