昨年4月、2年の準備期間を経て15年ぶりに国内の営業体制を大再編した三井住友銀行。国内最強ともうたわれる営業部隊は今、業績目標達成よりも問われていることがある。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)

「数字を聞いているんじゃない。やろうとしたことが、ちゃんとできているのかが知りたいんだ」

 2014年度の決算も締まろうという今年3月、三井住友銀行は例年と少し異なる年度末を迎えていた。14年度の業績の着地点はどれくらいになりそうか。法人営業担当の部下たちが営業店から上がってきた数字を耳に入れようとすると、“ボス”の法人営業担当役員は首を振ったのだ。

 業界屈指と自他共に認める三井住友の営業部隊は、時に“軍隊”に例えられるほど目標達成に対する厳しさと実行力を持つ。営業成績が重要でないはずがない。しかし、担当役員が部下に向かって「3月の終わりに数字をつくるために取引先へ頭を下げて回っているようじゃ駄目だ。来年度、再来年度のために工場見学をお願いするくらいでないと」と語るように、14年度は数字よりも重視していることがあった。

「実は歴代の法人営業部長が積み重ねてきた努力がついに実を結びました」「しばらく疎遠で会えなくなっていた社長に提案書を渡すことができました」

 営業現場の口から出てきた数字とは正反対の、そんな定性的な報告にこそ担当役員は注目していた。