まだ報じられていないが、日本航空の経営再建に関して、新たな公的支援案が浮上している。闇雲な地方空港の建設の原資になっている「社会資本整備特別会計」の「空港整備勘定」への上納金(年間900億円程度)を減免するというものだ。JALに急場を凌ぐ猶予を与えるだけでなく、航空官僚や交通族議員の利権の温床の一つにメスを入れることも可能な、言わば、“一石二鳥”の支援策である。JALの年内の資金繰りを取材すると、すでに行われた公的支援の継続だけでなく、こうした新たな支援がなければ、同社の破たんは確実な情勢だ。
だが、もちろん、よいことばかりとは言えない。JALだけに空整勘定への繰り入れの減免措置を行えば、ライバルの全日本空輸(ANA)は競争上、著しく不利な立場に追い込まれかねないからだ。杜撰なお化粧決算を放置してきたJALの経営責任も糊塗されてしまう。そこで重要なのが、詳細な経営・財務情報の開示と、事態がここに至ったことへの経営責任の追及である。そうしたけじめを付けずに、国民の税金をどぶに捨てるような救済をすることは許されない。
就任直後、八ッ場ダムの建設中止問題の後始末などに追われる前原誠司・国土交通大臣には気の毒だが、残された時間はあまりにも短い。獅子奮迅の活躍を期待したい。
運賃高騰の原因となる
空港使用料と燃料税の減免
まず、ニュースの焦点になる「社会資本整備特別会計」の「空港整備勘定」について説明しよう。この特別会計の勘定の予算規模(2009年度は5280億円、以下同じ)と巨大だ。歳出の多くは、その名の通り、各地の空港整備(3299億円)にあてられる。その内訳は、成田、羽田などの首都圏が5割、地方及び関西空港が2割、財政投融資会計への返済・利払いが3割となっている。
一方、空港整備以外の「その他の事業」(1981億円)には、空港の維持・運営費や環境対策事業費、航空安全保安費といった科目が含まれている。
「赤字垂れ流し」と批判された地方空港の建設原資も、この勘定から支出されてきた。
今回、注目されるのは、この会計の歳入面だ。歳入の柱は、財政投融資(882億円)、一般会計(648億円)、その他(885億円)など5つある。このうち受益者・事業者負担分は2つ。すなわち、空港使用料(2084億円)と航空機燃料税(781億円)だ。この航空機燃料税は、原油価格に連動するサーチャージに含まれているものとは別物だ。空港使用料も航空機燃料税も、航空運賃の中に含まれており、航空運賃が高騰する原因のひとつとなっている。