新規出店を成功させる鉄則は、正しいデータに基づき予測を立てることに尽きる。前回はそれによって出店を見極める方法を紹介した。その一つが、既存店との比較分析を行うというものだ。前提となるのは、既存店の現状を表す「正しいデータ」である。それはどのようにして集めるのだろう。そもそも、正しいデータとは、どういうものなのだろうか。
「正しいデータ」を持っているか?
――前回、新規出店を成功させる企業は既存店の状況をよく理解していると教えていただきました。
ディー・アイ・コンサルタンツ
取締役社長2003年、ディー・アイ・コンサルタンツに入社。出店戦略、売上予測の仕組みづくり、売上予測 調査など、数多くのコンサルティングに従事。都市型・郊外型の飲食・小売・サービス全般を得意とするシニアコンサルタントとして確かな実績を積み上げ、 2014年に取締役社長に就任する。
当然のことですが、立地と商圏が似ている既存店を選べば、客層や店舗売上の現象などについて予測の精度が上がります。それができない場合、つまり立地と商圏が似ている既存店がない場合に注意すべきポイントは、売上要因の共通点が多いかどうかです。
――多店舗を展開する大手チェーンであれば、立地や商圏が似ている複数店舗がありますので比較分析が可能でしょうが、中小ですと店舗数も少なく、比較するのが立地や商圏の異なる店舗になりがちです。つまり店舗数が多いチェーンほど新規店と似たような条件の既存店を選んで比較できるので、出店成功の確率も高くなり有利ではないでしょうか。
確かに店舗数が多いほど新規出店の確率は高いといえますが、店舗数が比較的少ないチェーンでも精度の高い売上予測を実現する方法はあります。ここでは、郊外型飲食チェーンのケースで説明しましょう。
このチェーン店は既存店A・B・Cの3店舗を展開しており、新たに2店(D・E)の出店を検討しています。
新規出店にあたって正しい意思決定をするための大前提は、事実(ファクト)に基づく売上予測です。その精度を上げるには、正しいデータが必要です。
そこで、このチェーン店は既存店の「正しいデータ」を整備することから始めました。具体的には、席数、駐車場台数、人口、交通量などの評価項目を設定し、それぞれの数値をデータベース化するのです(通常はもっと多くの評価項目を設定しますが、このチェーン店のケースでは4項目に絞って説明します)。
以降の分析は、このデータベースを基に進めます。そのプロセスを見ていきましょう。