イギリスの心理学者、タジフェルらが1971年に発表した論文の実験は衝撃的だった。彼らは、数人のお互いに知らない参加者をランダムに2つのグループに分け、その2つのグループのそれぞれのメンバーに、実験参加の報酬の分配を行わせた。参加者は、自分のグループの誰か(誰かは知らされない)と相手のグループの誰かとの間で、金額を分けるように言われる。それだけである。

 参加者は、グル―プの分け方に意味がないことを知っている。ならば、どちらのグループのメンバーだったとしても、平等に分けるべきである。しかし結果は、違った。彼らは何の根拠もないにも関わらず「自分のグループのメンバー」に多く金額を与えた。つまり、えこひいきしたのである。

人間は「派閥」「えこひいき」に満ちた生き物
「半沢直樹」はなぜヒットしたのか

 この現象は、内集団ひいきと呼ばれる。彼らの実験は、グループ分けするだけで、すでに人が「敵」「味方」という観点で人を見るし、そのように行動しがちであることを示したのである。

 実際、政治は派閥の世界だし、派閥のない組織はたぶんないだろう。しかしそもそも派閥とは同じ価値観やヴィジョンを共有したもの同士のグループのはずで、派閥間の関係にトレードオフが生じることはあるが、それは切り離して考えねばならない。「敵」「味方」のようにレッテル貼りをしたくなる気持ちはわかるが、そのような観点を持つのはフェアではない。

 そしてご存じのように、この観点は組織をボロボロにする。さらに悪いことに、上記例の筆者の友人のように中立にいるようにしている者にも、「敵」「味方」のレッテルを貼ってしまうのだ。知らないうちに、誰もが「派閥」に巻き込まれ、「派閥」の一員になり、知らないうちの本当に「敵と味方」に分かれてしまう。

 上記の例はまだ係長クラスだったからよかった。取締役レベルの管理職がこの観点で決定をし始めたら、組織全体の存続の問題になっていただろう。組織自体は潰れなかったとしても、遺恨は残るし、その後の組織運営が非常に難しくなるのは明らかだ。

 先日、社長と会長の間にコンフリクトが生じた大塚家具の場合は、まだいいケースだ。対立をオープンにして、第三者の目、特に株主の目に触れる機会を増やしたのはよいことだと思う。

 問題は水面下で行われる派閥争いである。知らないうちに組織を蝕むからだ。

 昨年大ヒットしたドラマ『半沢直樹』の主人公たちは、身体を張って派閥にくみすることを否定していた。それは見ていて痛快だが、逆に現実世界ではいかにそれが難しいかを物語っている。

 その意味で、現時点で私たちができることは、できるだけ「敵」「味方」の視点で組織を見ないようにすること、そしてそういう視点でものを見る人には警戒することだ。この点は特に管理職になるほど、気をつけなくてはならないと筆者は考えている。