「こりゃ本人じゃね?」ビットコイン創設者サトシ・ナカモトに「限りなく近い男」の正体写真はイメージです Photo:PIXTA

世界で初めて、発行主体を持たない分散型デジタル通貨「ビットコイン」を生み出した謎の人物、サトシ・ナカモト。しかし彼は、莫大な資産を残したまま、2011年に突如として姿を消した。富にも名声にも興味を示さなかったこの革新的な技術者は、いったいどんな人物なのか――。その正体を追い続ける中で、サトシと数々の点で一致する“限りなくクロに近いグレーな男”の存在にたどり着いた。※本稿は、ジャーナリストのベンジャミン・ウォレス著、小林啓倫訳『サトシ・ナカモトはだれだ? 世界を変えたビットコイン発明者の正体に迫る』(河出書房新社)の一部を抜粋・編集したものです。

ネット上で足跡すら踏ませない
ニック・サボという人物

 多くの手がかりが、「ニック・サボ=サトシ・ナカモト」説を裏付けていた。

 まず、ナカモトが展開したOPSEC〔Operations Security(作戦保全)の略で、敵対者に作戦情報を知られないために、情報漏洩の防止やセキュリティー対策を徹底することを指す〕のレベルの高さは、彼がネットによって自分に関するデータが結びつけられてしまうのを防ぐ方法について深く考え、実践してきた人物であることを示していた。

 暗号学者のレイ・ディリンジャー(ビットコインが正式にリリースされる前、ハル・フィニーと共に、ナカモトから依頼を受けてコードのレビューを行った人物)は、「彼の追跡を逃れる能力は、他に類を見ないほどです」と私に語っている。「望んだときに、ネット上で自分の正体を隠し通せる人など、他に会ったことがありません」

 ビットコインが登場する15年前から、ニックはそれについて考え抜いてきた人物だった。