古典音楽と20世紀の悲劇が
21世紀の映画で調和

◆「戦場のピアニスト」(2002年)

 そして21世紀も、カンヌ映画祭は魂の震える映画を選び出し、世界に紹介し続けています。

 2002年のパルム・ドールは、ロマン・ポランスキー監督の「戦場のピアニスト」。第二次世界大戦中の実話に基づく強靱な物語です。ユダヤ系ポーランド人ピアニスト、ウワディスワフ・シュビルマンが辿った数奇な運命をリアリズム溢れるタッチで描きました。実は、監督自身もユダヤ教徒のポーランド人の父を持ち、第二次世界大戦中にクラクフのゲットーを経験したのです。

 物語の主人公がピアニストなので、沢山の名曲が流れます。特に、ポーランドが生んだ偉大なる作曲家にしてピアニスト、フレデリック・ショパンの作品が染みます。ショパンが活躍した1830年代から40年代は、フランス革命からナポレオン戦争、復古主義を経て、再び欧州に革命の嵐が吹く時代です。民族主義が芽生えたポーランドでは、ロシアの支配からの独立をめざしたワルシャワ蜂起が失敗に終わり、その出来事と同時期に、ショパンはワルシャワ音楽院を最優秀の成績で卒業し、ウィーン・パリへと勇躍しました。

戦場のピアニスト サウンドトラック盤

 第二次世界大戦中にユダヤ系という理由で迫害を受けた主人公と、ナチス・ドイツに侵攻されたポーランドがショパンに重なります。

 映画のサウンドトラック盤(写真)は、夜想曲、前奏曲等のショパンに加え、音楽監督ヴォイチェフ・キラールの書き下ろしも収録。19世紀のショパン的古典、20世紀の悲劇的出来事、21世紀の感動的映画を見事に調和させています。

(音楽愛好家・小栗勘太郎)