仕事が上手くいっている時、心はアップ・ビートに弾む。

 そんな時は、都会のリズムがとっても心地良い。

 1秒にも満たないわずかな時間、コンピューターのキーを打つ刹那、億の単位の資金が動く。アイビー・リーグの名門大学で、MBAを取得したような連中が編み出す金融工学がものを言う時代だ。実体経済とは別次元のサイバー・スペースで繰り広げられるスーパー・マネー・ゲーム。国境を越えて資金と情報が瞬時に行き交う。アフリカの出来事がヨーロッパに波及し、日本の証券市場にも影響を及ぼす。まさに、風が吹けば桶屋が儲かる、を地で行く世界だ。

 瞬時に勝者と敗者が誕生し、勝者は富と名声を得て、敗者には何も残されていない。しかも、勝者と敗者はオセロのように瞬時に入れ替わることもあるから、油断大敵。

 だから、ビジネス戦士は、勝負に勝たなければならない、頭がいいとか、優秀だとか、家柄がいいとか、人脈が豊富だとか、人徳があるとか、運がいいとか、人生いろいろ大切な要素があるが、要するに、ここぞという勝負の時には勝つことだ、と言う人もいる。ハイリスク・ハイリターンで一攫千金を目指すもよし。誠意こそが大切と謹厳実直に仕事するのが王道と考えるもよし。信じるに足るは己だけと、他人を裏切り欺き上昇しても構わない、と。

 勝負に勝つことが全てならば、そうかもしれない。だが、それが全てだろうか?

 厳しい競争、勝利の方程式、戦略、勝利の美酒と賞賛、時は金なり的感覚、都会の喧騒、コンピューターの時空などしばし忘れてみようじゃないか。