クリミア併合に救われた日本
AIIBがさらなる追い風に

 しかし、予期せぬ大事件が起こる。ロシアによる「クリミア併合」(14年3月)である。これで、ロシアは米国の敵ナンバーワンになった。米国は「対ロシア制裁」を効果的に行うために、日本を巻き込まざるをえない。それで、「安倍問題」はひとまず棚上げされたのだ。

 しかし、中国の「反日統一共同戦線」戦略は、今も継続されている。そして、「終戦70年目」にあたる今年、中国は「安倍談話」と「憲法改正」問題で、再び「反安倍プロパガンダ」を強化していた。今回の総理訪米前、米国政府は、日本政府に「中韓への謝罪を演説に入れるよう」圧力をかけていた。

 そして演説後、「安倍は中韓に謝罪しなかった」と批判する米議員がいた。常識で考えると、これはとてもおかしなことである。なぜ、日本の総理が米国で中国、韓国に謝罪しないといけないのか?これは、たとえば「米国大統領は、中国にいったら日本への原爆投下を謝罪せよ」というようなものである。

 どう考えても、「日本の総理が米国議会で中韓に謝罪しなければならない理由」は見当たらない。しかし、それが米議員の一部で「常識」になるほど、中国のプロパガンダは成功していたのだ。

 ここまでで、「中国の戦略の要は、日米関係の破壊」であることを、ご理解いただけただろう。では、日本の最重要戦略は、なんなのか?当然、「日米関係を強化すること」となるだろう(プラスで、米中関係を破壊すればさらによい)。

 だから、日本の今の国益も、演説の目的も、「日米関係を強化すること」である。この結論、裏事情を知らない人が聞けば、「結局、日本は米国の属国でありつづけろということか!?」と思える。しかし、背景を詳しく知れば、「日米関係強化」は「戦略的に絶対必要なこと」なのだ。

 これは、あくまで日本の「戦略的選択」である。

 さて、今年3月、安倍総理にさらなる「神風」が吹いた。それが「AIIB事件」である。同盟国であるはずの、英国、ドイツ、フランス、オーストラリア、韓国、イスラエルなどが、米国の制止を無視して、中国主導の「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)に参加した。

 米国は、世界的に孤立。「覇権国家」の権威は、失墜した。そんな中、日本は大国で唯一、米国を裏切らず、AIIB参加を見送った。これは「属国だから」と見る人が多く、実際そうかもしれない。しかし、戦略的にも正しい判断であった