AIIBに日本はどうかかわっていくべきか? Photo:AFLO

 習近平指導部は外交の舞台で「中国の夢」という言葉をよく使い、外国との関係強化をはかってきた。昨年来、アメリカとの新たな大国関係の構築をはかると同時に、周辺諸国との外交では「運命共同体」という言葉を使っている。

 習政権は主に経済を軸に据えた活発な外交を展開しており、周辺諸国に対してインフラの整備などを盛り込んだ経済協力を進めている。現在中国が提唱している「一帯一路(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)」と「アジアインフラ投資銀行」(以下、AIIB)構想はまさにこの「運命共同体」外交の根幹をなすものといえる。

AIIB設立の理念は
米国主導の戦後体制からの脱却

 中国はなぜAIIB設立を構想したのだろうか。その目的は三つあると思う。まずひとつは、アジア開発銀行(以下、ADB)の理念のような「貧困の撲滅」ではなく、アジア諸国のインフラ整備のための資金をサポートし、経済協力を促すことにある。現在アジア地域のインフラ建設は立ち遅れており、2011年から2020年までのアジアのインフラ需要を満たすには8兆ドルが必要だといわれている。その現状に立脚してAIIBが提起されたのである。

 二つ目は、アジア独自の国際金融機関の設立である。その理念は、昨年5月に上海で開かれたアジア相互協力信頼醸成措置会議での演説で習主席が述べた「アジアのことは結局、アジアの人民に依拠して解決し、アジアの問題は結局、アジア人民に依拠して守っていかなければならない」という言葉にあらわれている。アメリカ主導の戦後の政治経済体制は先進国の立場に立って作られたものであり、完全に途上国の開発に資するものとは言いがたい。各地域の特徴に合わせた経済体制はその地域に属する国々の発展に役立つ、という考えだ。

 実は、この理念は毛沢東時代からいわれている。1950年当時の中国は、アジアでの影響力を増そうとしているアメリカの援助を受けたら、それから抜け出せなくなって、アジア諸国の政治的・経済的独立が損なわれると考え、「アジアのことはアジア人民が処理する」と主張した。ただ、それは他の国への排斥政策につながるのではなく、独立を維持しつつ他の国との平和共存をはかるものであり、その理念は、現在にも受け継がれている。それはAIIBの位置づけ見ればわかる。AIIBは既存の金融機関に対抗するのものではなく、あくまでも補完するものとしている。

 三つに、中国企業の「走出去(海外進出)」をさらに促すためである。改革開放がとられてから中国は主に外資を受け入れて経済発展を遂げてきたが、最近は中国企業の「走出去」も盛んになってきており、2014年は対外直接投資の規模が外資導入額のそれを上回り、中国は資本の純輸出国になった。その背景下で、中国は各国に高速鉄道やインフラなどの売込みをかけており、AIIBは中国企業の海外進出を促し、新常態下の国内経済を活性化させる上でも有利である。