現場の人たちは死にもの狂いで働いていて、その結果、心身を病んでいる従業員が増え、どんどん辞めていったなら……、お客様のクレームどころではなく、生産ラインが止まってしまうことになり、会社は傾き、結果的に社長さんのQOLだって下がってしまいます。

 A社の場合、離職率は高くありませんでしたが、従業員が疲れているのはたしか。また、営業成績を上げている営業マンも、開発部が仕事をこなせていないことでお客様のクレームにさらされ、ストレスをためていたのですから。そのため私はY社長にこう言いました。

 「社長、あなたのこの生活を維持したいなら、もっと従業員に目を向けてください。これだけ従業員が疲れていたら、いずれ維持できなくなります。あなたのQOLを維持するためにも、従業員のココロのケアは必要なのですよ」

 Y社長だけでなく、ほかの会社の経営者や役員のみなさんにも、私はイヤなことを言う人だと思われていると思います。でも、それは社長バッシングではなく、私がカウンセラーとして従業員と経営者のかけ橋役になったのであり、経営陣の見えていない部分を見る「目」になったということなのです。

 また、私がY社長にしたアドバイスは、カウンセラーの仕事というよりコンサルタントの仕事なのかもしれません。「ウチの会社の規模はこれくらいでいい」と、ある時点で拡大路線をやめ、それ以上仕事を増やさないというのは、一種の経営判断だからです。

 でも、企業では、経営者と現場のあいだに何層もの人の層があります。個人で仕事をしている人なら、もうこれ以上は仕事を受けられないというラインがわかるでしょうが、経営者には従業員のココロの痛みが届かないことがあるのです。

 ですから、会社を元気にするには、従業員のココロの痛みがわかる社長になっていただき、ときには経営方針を変えてもらうことも必要なのかもしれません。

 まず、一人にかかる負担を減らすと、人を育てるゆとりが生まれる。そのゆとりができてから人を入れて育てる。この基本的なステップを踏んで人を入れていけば、会社に貢献できる社員になりますし、新しく入った社員が自分の役割を理解できず、ストレスをためた先輩に怒られ病んでいくという構造は解消できるはずです。