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グループ・グローバルIT運営の要点

――組織間の協調関係の成熟度に応じた取り組み

内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]
【第42回】 2015年5月22日
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成熟度を高める
取り組みが必要

 一方、グループ・グローバルを視野に入れたIT運営とIT関連組織間の協調関係の成熟度を高めていく取り組みも同時に進めていくべきだろう。これが進展しなければ、いつまでたっても制度の統一やシステムの共通化といった具体的施策の検討が進まない。企業によって現時点の成熟度が異なるため、すでに実施済みという取り組みもあるだろう。自社がレベル3に位置するというのであれば、そこからスタートすればよい。

状況調査(レベル0→1):情報共有が行われておらず、本社IT部門が各事業体の状況をまったく把握していないという状況(レベル0)であれば、まず状況を調査しなければならない。各事業体からヒアリングする方法もあれば、調査票などによって情報収集する方法もある。適切なコンタクト先がわからないという場合は、そこから着手しなければならないこともあろう。当初は、IT部門の有無、担当者の人数、現状で利用している主要なシステムといった基礎情報の収集から着手し、段階的に詳細な情報を収集するという方法も有効な進め方のひとつといえる。

定期的交流(レベル1→2):グローバルIT会議やグループIT連絡会のような会議体を半年や1年に1回開催するなどして、常に最新の状況を把握できるようにするとともに、組織間の信頼関係を構築することが有効である。また、これにより本社と各事業体という1対Nの関係から、各事業体のIT部門が互いに見知ったN対Nの関係を構築することができる。互いに他の事業体の状況を知ることができ、相談や協力できる関係を醸成することは、さらに高い成熟度を目指す際の礎となる。会議体の議事としては、本社の方針などを一方的に発信するだけでなく、各事業体の課題や要望、今後のシステム化や更新に関する計画などを共有できる内容を盛り込むことが推奨される。

方針策定(レベル2→3):グループ・グローバルITに関する方針や中長期的な計画を策定するうえでは本社IT部門が主導するのが一般的であるが、全てを本社主導で決定するよりも、各事業体が参画して共同で策定するという方法が有効である。あるいは、グループ・グローバル全体に関わる大方針や共通的な領域の計画は本社IT部門が策定し、それを周知した上で各事業体がそれに従った計画や施策に落とし込み、全体的な計画に盛り込んでいくという方法も考えられる。

協力体制強化(レベル3→4):方針や計画が共有され、意思統一がなされたとしても、実際にさまざまな施策を遂行しようとすると各事業体で足並みが揃わないことがある。全ての事業体がコスト、人員、スキル、経験などを問題なく揃えられるわけではない。本社IT部門からの支援やノウハウの共有など、協力体制を構築することが求められる。共同プロジェクトの推進や組織を超えた人材交流なども協力体制強化の方策となりうる。各事業体個別では実施が困難と考えられていた難易度の高い施策についても、協調して遂行することで実現可能となる。

協調的PDCA(レベル4→5):グループ・グローバルIT運営の高度化は、終わりのない活動といえる。協調的にIT戦略や施策が遂行されていても、常にビジネス環境は変化し、技術革新はとどまることはない。本社IT部門と各事業体が歩調を合わせて継続的な改善のPDCAサイクルを回していけるよう、緊密なコミュニケーションと情報共有により信頼関係を深めていくことが求められる。グループ内でベンチマーク評価を行うことも有効な取り組みといえ、その結果を踏まえて強み・弱みを補完するなど、組織横断的な最適化が実現される。

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内山悟志
[ITR会長/エグゼクティブ・アナリスト]

うちやま・さとし/大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストととして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。2019年2月より現職。


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日々進化するIT技術をどうやって経営にいかしていくか。この課題を、独立系ITアナリストが事例を交えて再検証する。クラウド、セキュリティ、仮想化、ビッグデータ、デジタルマーケティング、グローバル業務基盤…。毎回テーマを決め、技術視点でなく経営者の視点で解き明かす。

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