問われるメディアの役割

 今回の年金の実質減額をネガティブなトーンで報じているメディアが多い印象を受けますが、「マクロ経済スライド」の発動は、少子高齢化が著しい日本において公的年金の持続可能性を高めるには必要不可欠ですから、むしろこの発動はポジティブであり素晴らしいことなのです。

「公的年金が実質減額になるのに賞賛するとはけしからん」と思うシニアの方もいるかもしれません。しかし、公的年金制度は今のシニア層だけのものではないのです。将来、シニア層になる人たちの制度でもあります。残念ながら、すでに将来のシニア層が受け取る年金額は相当程度低くなることが予想されています。将来の世代にのみ“つけ”を残すのではなく、健全なバランスを取ることが必要で、今回はようやくそのバランス改善に着手できたという点で、やはり喜ばしいことなのです。

 したがって報道においては、(1)今起こっている実質的な年金減額のみに焦点を当てるのではなく、これまでがもらい過ぎであり、ようやく本来の水準となったこと、そして(2)今後は二つの調整機能によって年金額が変動することがあり得るということを国民に知らしめるべきではないでしょうか。

 また、あわせて大事な点は、せっかく「マクロ経済スライド」という人口動態に合わせて年金額を自動調整する良い仕組みが導入されたとしても、それを適切に運営しないと、これまでのように将来世代に「負の遺産」が残ってしまうことがあり得るということです。「仏つくって魂入れず」では上手くいきません。今後、物価スライドの一時凍結のようなことを再発させないためにも、メディアには、健全な牽制機能を果たしてほしいと思います。

今回の川柳
受け入れよう 実質減額 ポジティブに

※本記事中の発言は筆者の個人的な見解であり、筆者が所属するアライアンス・バーンスタイン株式会社の見解ではありません。