退職金が住宅ローンと教育ローンの
返済で無くなると、老後資金はほぼゼロに!

 私はファイナンシャルプランナー(FP)として、18年以上にわたって個人の家計を見続けている。個別相談やセミナー後の質問を受けるなかで、この数年は「これからは老後貧乏になる人が増えるのだろう」と強く感じるようになった。なぜなら、老後資金の準備ができていない人の割合が年々増えてきているからだ。

 仮に、60歳時に受け取れる退職金が2000万円だとしよう。住宅ローンは定年前に完済ずみで、貯蓄が別途1000万円あるなら、老後資金は3000万円。60代前半を働いて収入を得るなら、老後資金としてはまずまずの金額だ。私がFPになったばかりの頃の1990年後半は、こうしたケースが多かった。

 ところが最近は、60歳時点で住宅ローンが1500万円残っている、子どもの大学進学時に借りた教育ローンは200万円、貯蓄は100万円くらいしかないといったケースが珍しくない。退職金で2つのローンを完済すると、老後資金はほとんど残らない計算になる。老後貧乏予備軍の典型例である。

 老後貧乏予備軍が増加傾向にあるのは、次のような要因がある。
 あなたはいくつ当てはまるだろうか。

1)住宅ローンを借りた当初の金額が多額だったため、60歳時のローン残高が退職金の半分以上になる予定(=老後資金が減る)

2)子どもを中学から大学まで私立に通わせている(=多額の教育費支出)

3)50代後半以降に教育費のピークがあり、子どもが社会人になってから親が定年を迎えるまで3年以下(=最後の貯蓄期間が少ない)

4)子どもの大学進学時に教育ローンや奨学金を借りている(=さらなる借金の増加)

5)そもそも計画的に貯蓄できていない(=消費世代のため、お金を使うのが美徳と思っている人が多い)

 3つ、4つ当てはまった方は、「自分のこと?」とドキッとしたのではないだろうか。2つ以上当てはまるなら、老後貧乏予備軍である可能性が高い。

 定年後も働き続ければ何とかなるだろうと思っても、再雇用後の収入は良くても年300万円台なので、暮らしていくことができたとしても老後資金は貯められない。