米大手金融機関に巨額損失をもたらす“主役”が代わった。
 
 7月17日から21日にかけて、メリルリンチ、JPモルガン・チェース、シティグループ、バンク・オブ・アメリカと米国の主要金融機関の第2四半期決算発表が相次いだ。メリルは46億ドル、シティは25億ドルの大幅赤字、JPモルガンは前年同期比52.7%、バンカメは同40.8%の大幅減益と惨憺たる結果だった。その中身を見ていくと、明確な構造変化が起きつつある。

 シティは直接のサブプライム関連で34億7500万ドルの損失を計上した。しかし、今回は北米の消費者ローンを中心とした個人向けの焦げつきと貸倒引当金積み増しの合計額が37億4700万ドルに上り、サブプライム関連損失を上回った。「これは巨額損失が計上され始めた昨年の第3四半期以降初めて」(石原哲夫・みずほ証券シニアクレジットアナリスト)の事態だ。
 
 サブプライム以外の住宅ローンの損失もふくらみ始めた。「ホームエクイティローン、プライムローンの償却比率が急上昇している」(藤岡宏明・大和証券SMBC金融市場調査部次長)のだ。JPモルガンの今四半期のホームエクイティローンのネット償却比率は1.89%から2.16%へ増加した。同じくプライムローンの償却比率も0.48%から0.91%にほぼ倍増した。

 商業用不動産ローンも例外ではない。バンカメの今四半期の純償却比率は前期の0.70%から0.88%へと増え、償却予備軍といえる不良債権の比率は1.6倍増の4.16%へと急増した。

 まさに、ほぼすべてのローンの不良債権が増え、焦げつきがふくらみつつあるといってよい。「サブプライム関連商品からそれ以外のローンの焦げつきへと巨額損失の主役は交代した」(中川隆・大和証券SMBC金融市場調査部次長)。

 今後、この変化に拍車がかかるのは間違いない。7月で12ヵ月連続の低下となったミシガン大学消費マインド指数に見られるように消費は悪化の一方。米国景気の減速テンポは増していく。雇用減少は続き家計所得はいっそう冷え込み、ローンの返済負担が重くのしかかる。

 サブプライム関連の損失で金融機関が傷み、信用収縮を引き起こし、景気を悪化させる。ローンの焦げつきが増え、それが再び金融機関の財務体質を劣化させている。そんな悪夢のスパイラルに米国は陥りつつある。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 竹田孝洋)