片桐 いつまでも、この仕事を続けていけることが、けっきょく上にいるってことなのかなと。まあ、20代より30代のほうがぜんぜん楽しかったし、やればやるほど楽しい仕事なので、それでいいんですけどね。

古賀 お笑いや舞台というのは、観客に評価されないと続けていけないだろうから、どうしても評価が気になってしまいますよね。

片桐 はい。やっぱり、認められてなんぼの世界ですから。ぼくが尊敬している人が舞台を見に来るってわかったら、もうその人だけに向けて芝居をしてしまいそうなくらい意識してしまいます。それでやっぱりその人に、褒められたいと思っちゃうんですよ。

岸見 褒める代わりに、「すてきな演技をありがとう」って言われたら、どうですか?

片桐 あ、それはうれしいですね。粋な言い方だ(笑)。でもたしかに、「ありがとう」と言われることもあります。「こんないい舞台があったなんて、教えてくれてありがとう」とか。そう言われれば気づくんですけど、やっぱり日常のなかでアドラー心理学を実践するのって、むずかしいです……。先生、なにかアドバイスをもらえませんか?

岸見 そうですねえ。できないときは、できないんじゃなくて「したくない」んだと思います。

片桐 やっぱり「勇気」が足りないんでしょうか……。

岸見 それを認めてみたら、ちょっと考え方を変えられるかもしれません。最初の一歩を踏み出すために、ぼくはカウンセリングでは「とりあえず1週間やってみませんか」という言い方をします。それでうまくいかなかったら、また違う策を授けます、とね。

古賀 一歩を踏み出すハードルを下げるんですね。