同じ内容なのに、伝え方で感動したり、まったく何とも思わなかったり。でもコツを知っているだけで誰もが、心を動かすコトバをつくることができます。今回は橋下徹さんの会見。大阪都構想が住民投票で否決された日、意外にも笑顔で会見した橋下さん。多くの人が心をゆさぶられた、橋下さんのコトバに隠された秘密です。

ジーン…ときた会見と、その伝え方の秘密

住民投票で反対が過半数を占めたものの、笑顔で記者の質問に答える橋下徹大阪市長=17日、大阪市北区(時事通信フォト)

 その日の夜、日本中が大阪市に注目していました。大阪都構想の住民投票。接戦とされ、でも当初は「賛成」多数となるとの予想も出ていたのが、結果、70万票対69万票での「否決」となったのでした。そして橋下徹大阪市長の会見がはじまります。7年半かけて大阪都構想をかかげてきた橋下さんがどのような会見をするのか、野次馬心も含め多くの人がテレビを見ていました。「もしかしたら泣くのでは?」とも思われた彼のコトバは、予想に反し、会見を聞く多くの人たちの共感を誘ったのです。

 「大阪市民のみなさん、重要な意思表示をしていただきまして、ありがとうございます」

 この笑顔の会見のはじまりに、多くの人が驚きました。1万票の差、つまり5千人が気持ちを変えれば実現できたのに、非常に悔しい気持ちだったはずです。なのに、まさか「ありがとう」というコトバから始まるとは。普通なら以下のような会見のはじまりを予想していたはずです。

 「応援していただいた方々、申し訳ありませんでした」

 これは、敗北でのストレートな気持ちです。ですがこう会見が始まったら、取材陣もふくめ日本中が、責任はどうとるのか?原因は?という責任追求モードになっていたことでしょう。橋下さんの会見には秘密がありました。そこには、「伝え方の技術」が使われているのです。