米国が埋立てに反発するのは
「偵察の自由」を守るため

 米国が中国による埋立て、飛行場建設に神経をとがらせるのは、それが中国海軍、特に潜水艦に対する監視活動の妨げとなりかねないためだろう。前回の本欄(5月14日配信)でも少し述べたが、中国の弾道ミサイル原潜は以前は黄海の奥、渤海湾に基地を置いていた。同湾の水深は平均約25m、黄海も約44mと浅い。

 中国の弾道ミサイル原潜「晋」型(8000t)は船底から司令塔の頂部まで高さ35m程だから、出航しても延々と浮上航走しないと潜航できず、発見されやすい。このため中国海軍は海南島三亜市付近に、潜水艦が入れる巨大なトンネルを持つ基地を造り、そこに「晋」型3隻などを配備している。南シナ海は深いから出航後間もなく潜航できる。

「晋」型が搭載する弾道ミサイル「巨浪2」は射程8000kmと推定され、南シナ海から米国東岸へは14000kmだから届かない。ワシントンやニューヨークを射程に入れるにはカムチャッカ半島沖かハワイ沖まで進出する必要があり、その途中で米海軍の対潜水艦作戦網で探知される可能性が高い。だが将来中国がより長射程の潜水艦発射ミサイルを開発することはありうるし、今日でも万が一の事態に備えて米海軍は中国潜水艦を水上艦や攻撃原潜で追尾したり、哨戒機で監視し、中国潜水艦の識別に必要な「音紋」を収集し、対潜水艦作戦に重要な水中の音波伝播状況(水温・水深などで相当変化する)のデータを蓄積しようとする。2001年4月には米海軍の電波情報収集機EP-3が海南島沖で中国海軍のF8II戦闘機と空中衝突し、F8IIが墜落、EP-3は海南島に不時着する事故も起きた。

 海南島は大きく開いた南シナ海に面しているため、航空攻撃に対して守りにくいから、中国はその南約300kmの西沙群島の永興島に2500mの滑走路を持つ航空基地を造り、防備を固めようとする。さらにその南約600kmのファイアリー・クロス礁の飛行場建設もその延長線上の計画とも考えられる。

 米海軍としては中国が人工島上空を含む防空識別圏を設定し、法的根拠が無くても中国戦闘機が接近して哨戒機の行動を妨げたり、軍艦同士のにらみ合いになっては面倒だから「即時中止」を求めるわけだ。