“基礎英語力のある、TOEIC高得点者は、「伝わらない英語」を使いがち。”具体的な英文を紹介しつつ、この事実をお伝えしていく。

これが「正しいけど、伝わらない英語」!

 筆者はツイッターで、日本の英語学習者とやりとりをするようになって5年以上になる。つぶやきであるはずのツイッターでも、学術論文でしか使わないような単語を使っている人がいる。ツイートを見て、「すごく簡単なことなのに、なんでこんなに難しく言うのかな」と思う毎日だ。

 それも、基礎英語力のある、TOEIC高得点者のほうが構文も複雑だったりする。その結果、非常に不自然な英語になっている。

「文法的には正しい。でも伝わらない」。それってどんな英語?

 下記はTOEICで満点を目指している人の英文だ。多分、「映画を見る予定だったが延期した。来週、家族と見るつもり」という日本語を直訳したのだろう。

悪い例
I had a plan to watch a movie, but put off the schedule. I’m going to watch it with my family next week.

 まず、映画を見るのにplanというのは仰々しい。また、a planとは具体的な計画であり、予定という意味では、通常plansと複数になる。さらに「スケジュール(予定)を延期した」というのも大げさだし、scheduleは、こうした形では使われず誤用である。

「映画を見る」という日常のカジュアルな行為なのだから、もっと簡単な単語だけで表現でするのが自然だ。

良い例
I was going to watch a movie today, but decided to watch it with my family next week.
(今日、映画を観るつもりだったが、来週、家族と観ることにした。)

 上記の例でもわかるように、日本語に忠実に言おうとすればするほど難解な文章となり、英語を間違える確率も上昇する。

 もう一つ例を挙げる。下記の英文を見てほしい。tryと現在形が使われている以外は文法的には間違っていないが、実に硬い。

悪い例
I try to put useful words and expressions I encountered into Excel that enable me to check them on any mobile device.
(どのモバイルデバイスでもチェックできるよう、遭遇した有益な単語や表現をエクセルに入力を試みる。)

日常会話で、encounterやenableなどの仰々しい単語や、下記のような複雑な構文を使って話をするネイティブスピーカーは、まずいない。

下記の良い例を見てほしい。やはり中学で習う単語だけで、十分、表現でき、こちらのほうが自然なのだ。

良い例
I’m going to put useful words and expressions I come across into Excel so I can look them up on any mobile device.
(どのモバイルデバイスでもチェックできるよう、目についた有益な単語や表現をエクセルに入力するつもり。)

大事なのは意思の疎通

「難しい単語を使うと知的に聞こえる、かっこいい」と誤解している人もいるようだが、まったく逆だ。日常会話で、こうした表現を使うと、TPOを理解していない、英語をマスターしていないことを露呈するだけである。
 下記は、「日本人がよく使う難しい表現」と「ネイティブが使う表現」を対比させたものだ。頭に入れておいてほしい。

 ソーシャルメディアでネイティブスピーカーに触れたり、英米ドラマを見ている人ならわかるように、ネイティブスピーカーは、日ごろ非常に簡単な単語を使っている。日本の中学で学ぶ単語や構文ばかりだ。

 コミュニケーションの目的は意志の疎通であり、相手に理解してもらえるよう、難しい内容でも簡単な表現を使って説明できる力こそが評価されるのだから。