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企業統治指針の適用で問う
ソニー精神(スピリット)のあるべき姿

伊庭 保(ソニー社友(元副会長))

(6)は、経営陣に対する相当数の反対票が投じられた場合について(補充原則1-1(1))。議決権行使助言会社の米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は、ソニーのROEが過去5年平均で5%を下回っているため、経営トップ再任に反対を推奨している。15年度からの業績回復の見込みを会社は主張しているが、予想に過ぎず考慮の対象にならないという。

 今年の株主総会では、12年のストリンガー氏選任のときと同様、平井氏に相当数の反対票が投じられると予想される。

 選任が可決されたとしても、「相当数の反対票が投じられた場合には、反対の理由や反対票が多くなった原因の分析を行い、株主との対話その他の対応の要否について検討を行うべきである」とされている。可決されてもそれで終わりでは決してない。

(7)は、後継者計画(補充原則4-1(3))。コードでは、取締役会は会社の目指すところや具体的な経営戦略を踏まえ、CEOなどの後継者計画について適切に監督を行うとある。「経営理念」が明確でない中で、どういう人材が後継者たり得るかという議論も、進みにくいのではないかと危惧している。

(8)は、取締役会評価(原則4-11、補充原則4-11(3))。コードでは「取締役会は、毎年、各取締役の自己評価なども参考にしつつ、取締役会全体の実効性について分析・評価を行い、その結果の概要を開示すべきである」としている。英国では上場会社の95%が毎年実施していると言われている。すでに実施済みであれば、その内容の開示を、いまだであれば終了した14年度分について直ちに実施して結果を開示し、また今後は毎年実施するべきだ。

(9)は、株主との建設的な対話(原則5-1)。コードでは、株主総会の場以外でも、「株主からの面談の申し込みに対しては、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するよう、合理的な範囲で、前向きに対応」、また「面談対応者は、株主の希望と面談の主な関心事項も踏まえた上で、合理的な範囲で、経営陣幹部または取締役(社外を含む)が面談に臨むことを基本」としている。

 これまでの提言に対して、ソニーの対応は十分なものとは言い難く、今後どのように臨んでいく方針なのだろうか。

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 今年も株主総会の時期が近づいてきたが、エレクトロニクス事業の再生という文脈でこの1年間の変化を見ると、4月に執行役に技術系人材の起用が進んだものの、まだやるべきことが残っている。

 「ソニーは開拓者。その窓は、いつも未知の世界に向かって開かれ、はつらつとした息吹に満たされている。人のやらない仕事、困難であるために人が避けて通る仕事に、ソニーは勇敢に取り組み、それを企業化してゆく」

 「開拓者ソニーは、限りなく人を生かし、人を信じ、その能力をたえず開拓して前進してゆくことを、ただひとつの生命としているのである」

 設立趣意書を源流とするこのソニー・スピリットの根底には、高い志、自由闊達な企業風土、人や人の能力への信頼など何物にも替え難い価値観がある。

 61年に創業者の井深大氏が年頭所感として掲げたソニー・スピリットを甦らせ、イノベーションを促し、エレクトロニクス事業を再生する道は現状ではまだ遠いかもしれない。

 それでも、エレクトロニクス事業の再生のために、株主として今後も改革を促していきたい。

「人が避けて通る仕事に勇敢に取り組む」としたソニー・スピリットが真に甦る日は来るか
いば・たもつ/1959年、東京大学法学部卒業、ソニー入社。84年理事、87年取締役、88年ソニー・プルコ生命(現ソニー生命)社長を経て、92年ソニー専務、94年副社長、95年最高財務責任者(CFO)。2000年副会長、01年ソニー銀行会長などを経て、現在はソニー生命、ソニーフィナンシャルホールディングス顧問。

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