香港の有権者が投票をする対象である2~3名の候補者は、指名委員会を構成する1200人のなかから過半数の支持を得なければならない。指名委員たちは中国との関係を経済や社会面から重視する“業界関係者”がほとんどであり、結果的に中国寄りの候補者しか残らず、そんな候補者たちに香港の有権者が1人1票の原則で投票をしたとしても、それは“偽の民主主義”(fake democracy)でしかなく受け入れられない、というのが“占中”活動で抗議デモを引っ張った学生団体や、今回反対票を投じた“民主派”と呼ばれる議員たちの基本的な立場である。

 “偽の民主主義”が実践されることを未然に防いだ民主派議員たちは、成果を喜んでいるように見える。採決終了後、民主派を代表して記者会見に臨んだ梁家傑議員は、「香港人は初心を忘れないということを、中国政府に示すことができた。今日は民主化運動の終わりではなく、新たなスタートの日になる」と語っている。

否決を受けて“統一戦線”を張る
中国共産党の思惑

 一方、この結果に対する中国共産党の反応には“統一戦線”が張られていた。前述の《人民日報》の主張がそれを象徴しているが、否決後1日以内に発表されたオフィシャルな見解を、いくつかレビューしておこう。

「少数の議員が私利から普通選挙法案を否決し、香港における民主主義の進展を阻害した。行政長官を普通選挙で選ぶという重要なチャンスを逃したことに、彼らは歴史的な責任を負わなくてはならない」(国務院香港・マカオ事務弁公室報道官)

「普通選挙法案が可決されなかった結果に対して、我々は広範な香港市民と同様に失望している」(中央政府駐香港連絡弁公室の責任者)

「中国政府は引き続き“一国二制度”、“香港人による香港統治”、高度な自治という方針を一貫して推し進めていく。行政長官と香港政府が法に依る施政を実行すること、香港政府が法に依って民主主義を漸進的に発展させ、最終的に普通選挙という目標を達成することを断固として支持していく。我々は香港の未来に大いなる自信を持っている…同時に、私は強調したい。香港は中国の特別行政区であり、香港情勢は中国の内政である。如何なる外国も干渉すべきではない」(外交部報道官)

「今回香港政府が法律に基づいて提出した普通選挙法案は立法会で可決されなかったが、全人代常務委員会による決定によって確定された普通選挙制度の方向性と法的原則は、行政長官の普通選挙を推進するプロセスのなかで徹頭徹尾執行しなければならない。将来における行政長官の普通選挙は依然として我々が決定した法案を憲法制度的な根拠としなければならない。その法的効力に如何なる疑いを持つこともあってはならない」(全人代常務委員会報道官)