世界が米国の金融安定化法案の採決の行方に固唾をのんでいたちょうどその頃、中国・天津では、欧米アジアの政財界トップが世界経済の今後について激論を交わしていた。世にいう「夏季ダボス会議」である。エリートたちが集ったサロンの“裏庭”ではいったい何が話し合われていたのか。

温家宝首相(左)の講演は質疑応答も含めて1時間近くに及んだ(右は世界経済フォーラム(WEF)のクラウス・シュワブ会長)  (C)World Economic Forum/Photo by Natalie Behing

  首都・北京から高速直通列車で約1時間半。中国北方最大の“対外開放”貿易港であり、トヨタ自動車の生産拠点としても知られる天津はその日、警官や公安らしき関係者が街頭のあちこちに配備され、物々しい雰囲気に包まれていた。

 米国の金融安定化法案の下院採決を2日後に控えた9月27日、中国の温家宝首相が、同地で開かれている世界経済フォーラム(WEF)主催の「ニューチャンピオン年次総会」(9月27日~28日)で講演するとあって、約1500人に上る年次総会参加者のほか、マスコミ関係者が世界各地から詰めかけたためである。

 温家宝首相の演説は、ウェブ上で全文公開されているのでここではあえて詳述しないが、中国経済について、「安定した、高成長は維持できる好条件は整っている」との強気の見通しを示しつつも、「2008年は最も厳しい年になる」「難しい局面を迎えている」との言葉が繰り返されるなど危機感の滲み出たものとなった。

 じつは温家宝首相は講演に先立って、同会議に参加する中国有力企業の一部首脳らと非公式の会合を持っている。「米国の金融危機が実態経済に波及し、世界経済の鈍化を招いていることに対して、多大な注意を払う必要があると語っていた」と関係者は明かす。

 中国の首相が自国の成長企業のトップの面前で、経済の見通しについて語るのは珍しい。投資ファンドを運営するというある中国人企業家は「先行きの厳しさを改めて痛感した」という。

「アンクルサムを
誰が助けるのか」

 ここでニューチャンピオン年次総会について、もう少し詳しく説明しておきたい。この総会は、国際的には「サマーダボス」という通称で知られる。毎年1月下旬にスイス有数の保養地ダボスで開かれる本家本元の会議と同じく非営利財団のWEF(本拠地ジュネーブ)が主催するものであり、政策提言の色彩の濃い“冬のダボス”に対して、ニューチャンピオン=成長企業という表看板どおり、ビジネス色の強さに特徴がある。昨年の第1回会議(開催地・大連)に引き続き、今年も世界経済の言うなればニューチャンピオンである中国において開催されたのだ。