Photo by Kazumoto Ohno
いま、「世界の常識」が変わりつつあります。「力こそ正義」の国際秩序、苛烈さを増す気候危機、AIの超速進化による人間疎外……。アメリカ、ロシア、中国といった大国が、かつては民主主義や人権、国家の安全というような大義名分で覆い隠していた領土的野心をむき出しにする姿が毎日のニュースを賑わせます。「人類は進歩する」という考え自体に、懐疑の目が向けられています。かつてない予測不可能な時代を生き抜くために、私たちは従来の常識、歴史観、思い込みを捨て、現代の世界に通用する「新常識」を手に入れる必要があります。※この記事は、大野和基『あなたの知らない「世界の新常識」』(集英社インターナショナル)から一部を抜粋・編集したものです。
アメリカはいま
中国の文化大革命を経験している
――「人間社会は啓蒙の時代から数世紀の間に、独立した法廷、研究機関や教育機関、職能団体など、真実を合理的に判断する仕事を行なう機関を発展させてきた。(中略)いまでは、共和党やそれと似た思想を持つ世界中の人々が、その意義を否定している」とあなたは近著※で書かれています。トランプ大統領のハーバード大学などへの迫害は、トランプだけではなく、アメリカに蔓延する「反知性主義」の表れなのでしょうか。
トランプの行動には2つの要素があります。1つは「権威主義」です。彼はファシスト、独裁者のように振る舞っています。トランプは、あらゆる批判の源、あらゆる権力の源、そして自分たちの行動を抑制するあらゆるものを弱体化させたいのです。だから報道機関を攻撃するのです。トランプは、報道機関は人民の敵だとさえ言います。
もちろん、私がクリントン政権にいたときも、批判されたいと思う人など誰もいませんでした。ですが、私たちの社会を機能させるには、私たちの肩越しに監視してくれる人が必要だと思っていました。民主主義には、監視し、批判してくれる人の存在が必要なのです。監視する人は社会的にとても重要な役割を果たしているのです。
大学も同じです。大学はいわば制御システムの一部であり、社会に対し抑制と均衡を保つ役割を果たしています。終身在職権をもつ人々が、社会について書き、考え、物事がうまくいかないときは発言します。社会にとってそのような人々が重要だと私たちは賢明にも理解しているのですが、トランプは彼らを好みません。これが1つ目の要素、権威主義です。
もう1つの要素は、「反体制主義」です。大学は一種の秩序を体現していますが、その秩序が必ずしも万人にうまく機能してきたわけではありません。それは認めましょう。
しかしトランプは、大学をどのように改革すべきかと考えもせず、性急に大学を破壊しようとしているのです。共和党の過激派には、反体制主義の傾向が濃厚です。つまり、私たちは今、1960年代から70年代初頭の中国と同じような文化大革命を経験しているのです。







