佐々木監督も前回のドイツ大会は“岡田流”で、ゴールキーパー枠はチーム最年長の山郷のぞみ選手を招集。山郷選手は出場しませんでしたが、若い選手を精神面から支えることを期待していたようです。ところが今大会は、グループリーグの3試合で、山根恵里奈、海堀あゆみ、福元美穂の3選手をそれぞれ起用する異例の采配で、注目を集めました。

「温情采配」ではない全員起用
経営者へのヒントは前回より多い

 若い選手には経験を積ませる、あるいはベテランの選手にはコンディションを上げてもらうといった目的もあったのかもしれませんが、本質的には温情采配ではないでしょう。私には、この4年間のチームメイキングの集大成のように思えてなりません。

 前回は、女子サッカーの世界を切り開いてきた澤穂希選手を中心とするチームでした。先述した決勝戦での同点ゴールを始め、ここぞというところでの勝負強さ、そしてチームの若手たちの精神的支柱としての役割。日本人選手として男女を通じ、初めてバロンドールを受賞した絶対的な存在でした。しかし、レジェンドとも言える彼女も今年で37歳。衰えも隠せなくなった中で、世界トップの実力を維持しつつ、その後継者を育ててこなければなりませんでした。

 澤クラスの選手はそういるわけではありません。だからこそ、若手にも控えにも大胆にチャンスを与え、競争原理の徹底化を通じて、ワールドクラスで戦うための球際の強さを磨き上げていきました。

 そして、もともとの強みであるスピードと組織力を成熟化。また、今大会はヨーロッパ勢との試合で終盤に相手選手を置き去りにする場面も目立ちました。運動量においても、前回大会より格段に上回っているように見えます。「ポスト澤」の課題に向き合い、チームメイキングしてきた佐々木采配の結果が、準決勝までの安定した戦いぶりであり、言うならば日本の女子サッカーの総合力を、この4年で押し上げたと言えます。