「あれも大事、これも大事」と悩むのではなく、「何が本質なのか?」を考え抜く。そして、本当に大切な1%に100%集中する。シンプルに考えなければ、何も成し遂げることはできない――。LINE(株)CEO退任後、ゼロから新事業「C CHANNEL」を立ち上げた森川亮氏は、何を考え、何をしてきたのか?本連載では、待望の初著作『シンプルに考える』(ダイヤモンド社)から、森川氏の仕事術のエッセンスをご紹介します。

リーダーがエラそうだと、優秀な人から辞める

 社長は偉くない──。

 僕は、そう考えています。別に、宣言したわけではありませんが、みんなもそう思っていたはずです。僕が社内を歩いていても気づかない人もいたし、挨拶されるわけでもない。でも、それで何も困りません。

 僕は、事業がうまくいっている部門については基本的に口をはさまない主義です。なぜなら、うまくいっているときは、口をはさむよりもその組織をエンパワメントするほうがスピードも早くなり事業もうまくいくからです。

 とはいえ、うまくいっている部門に関しても、たまに現場のことで素朴な疑問が浮かぶことがあります。そんなときは、LINEで「どうして、そうするの?」などとメッセージを送るのですが、「ちょっと今忙しいんで、あとでお願いします」とスルーされたことも何度もあります。

 でも、それくらいでいいと思っています。むしろ、僕が何かを言うことで右往左往されるほうが、よほど不安になります。

 だいたい、LINE株式会社は「いいものをつくりたい」という人が多く集まっていますから、「偉い人」はむしろ邪魔にされるだけです。彼らが興味あるのは「偉い人」ではなく「すごい人」。自分よりも「いいもの」をつくり続けている人です。

 社長が「いいもの」をつくっているのなら話は別ですが、そうでなければ基本的に社長には興味がない。僕も若いころは、「社長がエラそうだと、やりにくいんだろうな……」と思ったものです。むしろ、尖っている人は権威が嫌いです。だから、もしも僕がエラそうにしていたら、優秀な人から順にどんどん辞めていったような気がします。