LINE前社長である森川亮氏が、海外進出を視野に入れた女性向け動画プラットフォーム『C CHANNEL』を立ち上げ、いま注目を集めている。48歳でのLINE(株)社長退任とゼロからの出発の背景には、何があったのか。元ヤフートピックス編集長で現在ウェブメディア『THE PAGE』の代表を務める奥村倫弘氏が、森川氏の経営哲学と『C CHANNEL』の戦略に迫る。(THE PAGE×ダイヤモンド・オンライン共同企画)
一見、冷徹に見える
「シンプルな考え方」に込められた本音
――LINE社長退任後に出された著作『シンプルに考える』を拝読しました。最初は、会社員が働くための攻略本のようなイメージを持っていたんですね。ところが実際は「社員教育はばかばかしいから止める」「モチベーションを上げてもらうような人は失格」など冷徹な視点が含まれる意外性のあるものでした。この本には、どういうメッセージを込められたのでしょうか。
僕は経営者として、もちろん社員を愛していました。ですが、愛とは軽いものではなくて、本当の愛とはその人が未来永劫しっかり生きていける力を持たせることだと思ったんです。そうすると、甘えた環境にいる社員は、長くは生き残れないですよね。ビジネスの世界は厳しいですから、その環境でいかにきちっと仕事をして成果を出せるか。どんな環境を用意すれば、彼らが成長できるのかを考えてこの本を書きました。
――会社運営を「シンプルに考える」。それは会社がヒット商品をつくり続けることがすべてだと理解しましたが、その結論に行きつくまでにどんな紆余曲折がありましたか。
おそらく多くの会社は、特に上場すると、数字のために働くことになりますよね。数字というのは、それだけを考えて上がるものではなく、むしろ数字だけ考えて働くとお客様が離れてしまうこともあります。そこで、いろんな会社を見たときにシンプルにいい商品、サービスを出すことが会社を長く続かせるとわかってきました。
――本のなかで「社員のモチベーションは上げない」とおっしゃっていますが、経営者としてはモチベーションを上げる雰囲気を作ることはやはり大事だと思います。社員のやる気を引き出す方法は何かやられていましたか?
会社が長く続くためには、いい商品を作らなければならない。それを1つの目標としたときに、いい商品をつくりたいと思う環境を社員に用意できるかが重要だと思います。もし、売上目標があったうえでいい商品を作りなさいと言えば、社員は悩んでしまいますよね。ですから、社外に対しても社内に対しても、わかりやすくメッセージを出すことが大切だと思います。