今年は第二次世界大戦が終わって、70年の節目の年です。政治・外交の世界では、安全保障と歴史をめぐって様々な議論が行われています。本格的な夏がくれば、1945年8月6日、9日、15日について考える人も多いでしょう。

 今から70年前の夏、終戦後の人々は、心の支えを捜し求めました。多くの人にとって歌は癒しであり、苛烈な日常からの束の間の解放でもありました。戦後、ジャズやカントリー&ウエスタン等の欧米の音楽が日本に流入し、当初は進駐軍のための娯楽だったものが、日本人をも魅了します。

 古くは、遣隋使・遣唐使の時代から、海外の良きものを、自らの文化に取り入れる才に長けていた日本人。そのDNAは、脈々と受け継がれて来ました。惨めな敗戦に続く占領が終わったのが1952年ですが、そのわずか15年後には、日本は自由世界第2位の経済大国になりました。これは、現代史の奇跡といって良いでしょう。当然ながら、経済で証明された日本人の能力は、他の分野でも発揮されます。もちろん、音楽も。

 欧米のロック・ポップ・ジャズの物真似から始まった戦後日本の大衆音楽は、急速な成長と成熟をみせました。特に、1970年代以降は、Jポップ、Jロック、Jジャズと称され、上質の音楽を生み出しています。それらは、本場の欧米に勝るとも劣らぬ優れたものです。

あなたは、暑い夏にどんな曲が聴きたくなりますか?

 暑く湿った日本の不快な夏も、素晴らしい日本の音楽があれば乗り切れるはずです。と、言うわけで、“邦楽の底力”を証明する大人の夏ソング厳選4曲をご紹介します。

真のJロックは
ここから始まった

◆RCサクセション“スローバラード”

 夏は、太陽のエネルギー照射量が最大化するからでしょうか、男と女の恋愛エネルギーも最高潮を迎えます。そんな夏の日の恋も、清志郎が歌えば、とても叙情的でソウルフルになります。

 “スローバラード”は、若い恋人同士が、市営グラウンドの駐車場に停めた車の中で夜を明かす物語。胸がキュンとする、お伽噺のような歌詞です。

 夏の夜露が車の窓を覆い、彼女の寝言を聞いたり、二人がとっても良く似た夢を見たりするのです。そして、カーラジオから流れていたスローバラードが、二人の愛を高めるわけです。