何事につけ、本当に好きになった事というものには、一切の理由も理屈もなく、ただ好きになってしまったとしか言いようがないと思いませんか?
何故それ(例えば、鉄道や写真や蝶々やプラモデル等々)が好きか、と問われても、答えに窮してしまいます。とりあえず、その場を取り繕うだけならば、適当に世間受けのする答えは難しくはありません。しかし、本質的に何故、それが好きか説明するのはほぼ不可能でしょう。
好きになってしまう対象も千差万別、人それぞれです。まさに一人一人の個性が違うように、心底好きになる事柄もそうです。
そして、興味の尽きない考察の対象となるのは、好きな事と仕事の関係です。理論的に言えば、好きな事を仕事にすることの幸福と不幸があるように、好きな事と仕事が別々であることの不幸と幸運があるようです。それでも、心底好きなことを職業にできることは、そのことで苦労の種を抱え込んだとしても、やはり素晴らしいことのように思えます。
好きな事が仕事になった瞬間に単に己の趣味を越えてしまいます。仕事の関係者や顧客などの意向は無視できません。それでも、好きな事をやって生活の糧を得ることは(様々な制約が課されたとしても)特権的なことに違いありません。
例えば、三度の飯よりギターが好きな少年・少女は無数にいるでしょうが、職業ギタリストとして生きていける人は一握りの実力と幸運の持ち主だけです。
と、いうわけで、今週の音盤は高中正義「ブルー・ラグーン」(写真)です。
歌手が声で歌うようにギターを歌せる
高中正義の「ブルー・ラグーン」は、日本の現代音楽シーンで特別な地位を占めています。日本に限らずどこの国・地域でも、人々が愛する音楽は基本的に歌です。そんな中で、「ブルー・ラグーン」は歌のないギターが主役の曲としてチャート上位に食い込んだ稀有なヒット曲です。もちろん、数多くのギター小僧達が一生懸命コピーした訳ですが、ギターを弾かない普通の人たちをも魅了したのです。その秘密は二つです。