世界を揺るがした米ゼネラル・モーターズ(GM)の連邦破産法第11条(チャプターイレブン)適用申請から早や2週間が経った。オバマ政権に背中を押されるかたちでルビコン川を渡ったGM経営陣は今、この顛末をどう総括し、前途にどのような見通しを持っているのか。フリッツ・ヘンダーソンCEOの右腕として、債権者との交渉を率いたレイ・ヤング執行副社長兼CFOに聞いた。(聞き手/ジャーナリスト ポール・アイゼンスタイン)
レイ・ヤング(Ray G.Young) 米ゼネラル・モーターズの執行副社長兼最高財務責任者(CFO)。1961年カナダ・オンタリオ州サウサンプトン生まれ。両親は中国・広東省出身の移民。1984年ウェスタン・オンタリオ大学で学士号(ビジネスアドミニストレーション専攻)、1986年シカゴ大学でMBAを取得。同年GMに入社。財務、海外部門を渡り歩いた後、スズキとの合弁事業の副社長や、GMのCEOの登竜門といわれるブラジル現地法人のトップを歴任。2008年3月より現職。Photo (c) AP Images |
―GM経営中枢が、“破綻やむなし”との諦念に傾き始めたのはいつごろか。傍目には、チャプターイレブン(連邦破産法第11条)申請に抵抗していたリック・ワゴナー氏が、オバマ政権による事実上の政治的圧力によって、会長の座を追われた3月の時点で、今回の結末は決まっていた気がするが。
ホワイトハウスの姿勢は、確かに、3月に入って変わった。その象徴的な動きは、政府が追加支援の条件として提示していた債務の株式化に関するハードルの引き上げだ。
昨年12月、われわれが財務省と交わした当初の合意では、政府支援の条件は、無担保債務(約270億ドル)の3分の2の削減だった。しかしオバマ政権はそのわずか3ヵ月後に、バーの高さを90%に引き上げた。今振り返れば、破産裁判所の外で政府の要求に応えることは、この時点で、かなり難しくなった。
―昨年12月に政府(当時はブッシュ政権)から“つなぎ融資”を受ける前に、チャプターイレブンへの適用を申請するという考えはなかったのか。
それはなかった。理由はシンプルだ。準備ができていなかった。もしも(債権者との事前交渉などの)プランニングがなされていなかった12月時点で申請していたら、裁判所における破産手続きは酷いことになっていただろう。これはあくまで結果論だが、この5ヶ月で、われわれは事前調整型の破産手続きに入っても大丈夫なだけの準備をすることができたといえる。