今回の中国株の暴落で、世界中のマーケットが連鎖下落を起こした。日本経済もまた中国の不動産市況や株価の動向とは無縁でない。「株の下落が進めば、訪日中国人による消費も冷え込むのではないか」という懸念もあるなか、果たして、中国株は訪日観光の動向をも左右するといえるのだろうか?
中国の株式市場における個人投資家の比率は約80%を占める(日本は約20%)。その数は9000万人にのぼると言われており、14人にひとりが株式投資を行っている計算になる。しかしその実態は、国営企業の工場労働者や年金生活者など、一線を退いた者が生活防衛のために投資する傾向が強い。
証券会社の前にできる中年男の人垣の中で「予想屋」が講釈を垂れる風景は、まさに渋谷や浅草で見る場外馬券売場そのものだ。中国の株式投資は、そのお手軽さといい、購入者層といい、日本で言う競馬に近い感覚がある。テレビ報道の映像でもお分かりのとおり、中国の株式投資とは“庶民”参加型の一種の賭博なのだ。
株ブームを盛り上げた
個人投資家たちの実像
今回の株ブームは全国的に熱を帯び、文字通り「猫も杓子も」巻き込んだ。勝った者もいれば、負けた者もいる。ここでは、今回どんな人たちが株式投資に熱を上げたのか、まずは、今回の株に興じた中国人個人投資家の実像に迫ってみよう。
中国の電子メディア「新浪財経」が1万2200万人を対象に行ったアンケート調査がある。その結果は興味深い。中国では1990年に株式市場ができ、まだ20余年の歴史しかないが、10年以上にわたって株式投資を行ってきた古参組は全体の31.4%を占め、また5~10年の経験者の32.4%を併せると、比較的長期的にわたる投資経験者は全体の6割以上を占めるという。
この「6割の個人投資家」は2007年の上海株暴落の経験者でもあり、近年市場が復活するまで手持ちの株を持て余してきた庶民投資家たちでもある。このような長期的に株式に投じてきた個人投資家のうち6割は、投じた金額の半分の利益しか得ることができず、それどころか2割が損失を出していると調査結果は伝えている。