なりふり構わぬ株価維持策
安定にはまだ時間を要する
中国政府当局の対応は、まさになりふり構わぬものだった。
6月12日、ついに中国株式市場のバブル崩壊が始まった。この日の上海総合指数5166ポイント、深セン総合指数3141ポイントを頂点に、中国の株価は坂を転げるように急落。これに対し、政府当局はありとあらゆる策を打った。
追加利下げ、取引手数料の引き下げ、年金基金による株式への投資上限引き上げ、信用取引の規制緩和、信用取引の追証規定の廃止、新規株式公開(IPO)の停止、適格外国機関投資家(QFII)の投資枠拡大、持ち株比率5%以上の大株主の株式売却を禁止、政府系ファンドや証券会社を動員しての買い支え、さらには警察による“悪質な空売り”の捜査──もはや“何でもあり”である。何より、上海・深セン両市場で約半数の銘柄を取引停止に至らしめたことは、世界の市場関係者を驚愕させた。
そこまでやっても、株価の下落は止まらなかった。6月12日から7月8日までの下落幅は、上海総合指数で32%、深セン総合指数で40%に及ぶ。7月9日、相場はようやく反発。今度は上海総合で6%、深セン総合で3%という急上昇を見せたが、これで投資家の動揺が収まったとは思えない。
「取引停止を解除したときにどうなるか。上下10%以上も株価が振れる状況が1ヵ月以上続いており、市場は疑心暗鬼になっている」(西濱徹・第一生命経済研究所主席エコノミスト)
「政府当局の対策は、株価をある程度下げ止める効果はあるだろうが、上げることは期待できない。押し上げに寄与するのは大手証券会社21社が1200億元を拠出してのPKO(株価維持策)だけだが、市場の規模と比較すれば額が小さく、効果が出る期間が短い」(齋藤尚登・大和総研主席研究員)
「投げ売り状態になっている。政府系ファンドや証券会社に買わせているものの、どこまで下がるか想定が難しい」(三尾幸吉郎・ニッセイ基礎研究所上席研究員)
まだ当分、不安定な状況が続くのは必至だ。問題は、どの水準で安定するかである。