「何度言っても聞かない」「同じ失敗を繰り返す」――小学生の男の子を持つ親なら、誰もが一度は頭を抱えたことがあるだろう。しかし、その「言うことを聞かない性質」こそが、実は学力を大きく伸ばすカギになるとしたらどうだろうか。進学塾VAMOS代表・富永雄輔氏の『男の子の学力の伸ばし方』には、男の子特有の「トライ&エラー」を味方につける具体的な方法が書かれている。親が先回りして正解を教えるのではなく、あえて失敗を経験させることで、子ども自身が納得し、驚くほど自主的に動き出すようになる。本連載では、本書の内容から、子どもの計画・理解・反復・習慣のプロセスを体系化した「男の子の特性」に基づく学習法をお伝えしていく。(構成:ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)

勉強をする男の子Photo: Adobe Stock

「言っても聞かない」は男の子の本能

「式を書いて解きなさい」と何度指導しても、まったく聞こうとしない。親や先生にとって、これほど歯がゆい場面はないだろう。しかし著者は、こうした態度こそが男の子の脳の特性そのものだと述べる。

 自分で実際に失敗するまで「この方法ではダメなんだ」ということが腑に落ちないのだという。

精神的な成長が早い女の子は、想像力や予見力を持っており、親に言われたことを理解できます。でも、男の子はそうではありません。自分で失敗するまで「この方法はダメなんだ」ということがわからないのです。だから、男の子にはトライ&エラーをさせて、自分で納得してもらう必要があります。(『男の子の学力の伸ばし方』より)

 つまり、男の子に「こうしなさい」と命じても、本人が体験として痛感していなければ、その言葉は右から左へ抜けていく。これは怠けているのではなく、「自分で体験しないと納得できない」という男の子の脳の仕組みなのである。

 本書では、算数の式を書かなかった4年生の男子児童のエピソードが紹介されている。

 何度指導しても聞かなかったその子は、ある段階で自己流ではまったく計算が合わなくなり、大慌てしたという。そこでようやく「式って大事なんだ」と自分で気づき、以後は言われなくても式を書くようになったそうだ。

「やらせて失敗させる」が最善手

 もう一つ、本書には漢字の書き取りに取り組む4年生の男子児童のエピソードも登場する。

 その子は勉強方法を自分で決めたがり、「リビングでお母さんと一緒に」「自分の部屋で一人で」「学校の休み時間に友だちと」など、いくつものアイデアを自ら出してきたという。

 著者は、どう考えても母親に見てもらうのがベストだとわかっていたが、あえてそれを指摘しなかった。

 その子は「学校の休み時間が合理的だ」と主張したものの、実際には遊んでしまって全然できず、ようやく「母親に見てもらうのがいい」と自分自身で結論にたどり着いたのだ。

 ここで重要なのは、著者が「あえて正解を教えなかった」という点である。

 大人の目には最初から答えが見えていても、それを伝えてしまうと、男の子の中に「自分で気づいた」という実感が残らない。

 本書は、親が先回りせず、子ども自身に試行錯誤させることの大切さを繰り返し説いている。

このように、思いついたことはなんでもやりたいのが男の子です。だから、親が「こうしなさい」と言うよりも、やらせて失敗させたほうがいいのです。男の子は失敗からのリカバリーが非常に早く、起き上がりこぼしのように復活しますから心配いりません。(『男の子の学力の伸ばし方』より)

「起き上がりこぼし」という表現が象徴するように、男の子は失敗してもすぐに立ち直れる強さを持っている。親が心配するほど、本人はダメージを引きずらないのである。

早く始めるほど「試す余裕」が生まれる

 では、こうしたトライ&エラーを実践するうえで、時期はいつがよいのだろうか。

 著者は、中学受験を視野に入れるならなるべく早くから勉強を始めることを勧めている。6年生からでは試行錯誤をしている余裕がないが、3~4年生ならばいろいろ試せるからだ。

 たとえば、夕食前に勉強すると集中できる子もいれば、就寝前の30分が合っている子もいる。こうした「自分に合った勉強のやり方」は、実際に試してみなければわからない。早い時期にたくさん試せた子ほど、その後の学習密度が上がると著者は述べている。

「見守る力」が子どもの自走力を育てる

 本書のメッセージは、「放任しなさい」ということではない。

 子どもが失敗したときにすぐ手を差し伸べるのではなく、本人が自分で気づくまで少しだけ待つ。その「少しの我慢」が、男の子の主体性と学ぶ力を大きく伸ばすのだろう。

 親としてはつい先回りしたくなるものだが、「失敗は成長のための燃料」だと捉えれば、少し気持ちが楽になるかもしれない。

 とくに中学受験を考えている家庭であれば、早い段階から子どもにトライ&エラーの機会を意識的につくることが、長期的な学力向上につながっていくのではないだろうか。