透けて見える経営陣の求心力

 一連の新規事業の創出を巡って、唯一気がかりなのは、ソニーが内部の資金をどれだけ投下し、支援していこうとしているのかということだ。

 クラウドファンディングという外部資金に頼ると、製品を早い段階から市場の厳しい目にさらし、選別のふるいにかけられる一方で、ソニーの中にとどまり、製品開発を続けることの“必然性”はどうしても薄れてしまう。

 FESウオッチのように、自社の生産拠点を生かすことで、いち早く製品化できる強みはあるものの、内部の資金援助が十分でなく、外に出ようという遠心力が働いたときには、それだけでは大きな抑止力にはなり得ないだろう。

 折しも、ソニーは公募増資などによって4200億円の資金調達を計画している。資金は主に、需要が好調な画像センサーの増産に充てるというが、新規事業への投資の話はまだ聞こえて来ない。

「安全なことだけしかやらないのであれば、企業としては今後伸びていかない」

 平井社長がそう話すように、ソニーにとって新たな挑戦に向けた投資は不可欠だ。

 現場から生まれた胎動をどう大きく育て、ブランド力の向上につなげいくか。今後の取り組みによっては、現場の底力だけでなく、平井社長をはじめとした経営陣の求心力も透けて見えてきそうだ。