第5回にご登場いただくのは、生体認証・静脈認証技術を活用したセキュリティシステムを提供するモフィリア社長の天貝佐登史氏。簡単に本人識別ができる利点に着目し、ソニー時代から事業化へ取り組んでいたが、ソニーを退職し2010年12月にモフィリアを起業した。創業3年でトルコの国家プロジェクトや中国での案件を獲得し、事業も安定成長のフェーズに入りつつある。天貝氏にモフィリアの展望とソニーへの想いについて伺った。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 片田江康男)

静脈がない人はいない
世界70億人がユーザーに

あまがい・さとし
1979年3月東京工業大学大学院総合理工学研究科システム科学(人工知能)専攻修了。同年4月ソニー入社。92年9月ソニーエレクトロニクス(アメリカ)商品企画、経営企画VP。97年9月本社国際人事部長、R&D人事部長。2000年4月エンタテインメント・ロボットカンパニー・プレジデント(aibo、QRIO)。06年3月本社コーポレイトプレジデント室長。07年2月FVA(静脈認証)事業開発室長。10年12月株式会社モフィリア創業、代表取締役社長。 Photo by Naoyoshi Goto

――モフィリアは生体認証・静脈認証の技術を使ったセキュリティシステムを開発、導入していますが、このビジネスは1兆円市場だとか。

 ゴールドフィンガーとかマジックフィンガーとか言っているんですよ(笑)。「人間の体」というたぐいまれな識別情報を使って、なりすましや情報流出を防ぐ技術です。

 ユーザーインターフェース(UI)はとても簡単。静脈認証って、最先端技術の結晶みたいなイメージがありますが、生きている人で静脈がない人はいないので、指さえあればいい。しかも、ちょっと震えていても大丈夫。そういう意味で、実はローテクの極みとも言えますね。

 ですので、70億人の世界中の人がユーザーになり得ます。

――ただ、セキュリティシステムを導入した側は、識別情報をストックしておいて、照合しないといけないので、いわゆるハイテクですよね。

 確かにサーバーに静脈認証の情報をストックして、照合しなければいけないですが、データベースを複雑にする必要はないんです。導入方法もものすごくフレキシビリティがあって、いま使っているデータベースにちょこっと静脈認証のデータを加えればいい。一人分の情報量も、ものすごく小さい。シムカードにも入るくらいですよ。容量で言うと、数百バイトです。たったそれだけの情報で、70億人のそれぞれの人を簡単に識別できる技術なんです。