69万部突破のベストセラー『伝え方が9割』の著者であり、第2弾である『伝え方が9割(2)』も好調の佐々木圭一氏と、LINE株式会社CEO退任後に動画ファッションマガジン「C CHANNEL」を立ち上げ、著書『シンプルに考える』も話題の森川亮さんの対談が実現。お二人の専門領域でもある「今の時代のコミュニケーション」について語っていただきました。(構成/伊藤理子 撮影/石郷友仁)

相手が捕れるボールを投げないと、意味がない

森川亮(もりかわ・あきら)1967年生まれ。筑波大学卒業後、日本テレビ放送網に入社。コンピュータシステム部門に配属され、多数の新規事業立ち上げに携わる。2000年にソニー入社。ブロードバンド事業を展開するジョイントベンチャーを成功に導く。03年にハンゲーム・ジャパン(株)(現LINE(株))入社。07年に同社の代表取締役社長に就任。15年3月にLINE(株)代表取締役社長を退任し、顧問に就任。同年4月、動画メディアを運営するC Channel(株)を設立、代表取締役に就任。

森川 最近、いろいろな大学で講義をする機会があるのですが、学生によく「やっぱり才能がないとだめですかね?」って聞かれることが多くて。そんなとき、佐々木さんの例を出すようにしているんです。

佐々木 え、僕のことですか?ありがとうございます。

森川 コミュニケーションに関して、以前佐々木さんは自分はコミュニケーションの才能がないと思っていた。でも、だからこそコミュニケーションそのものをじっくり考えて、よりよい「伝え方」を考え出した。その事実を、学生に伝えています。コミュニケーションってキャッチボールと一緒で、「相手が受け止められるようにボールを投げる」ことが重要。そのキャッチボールの仕方をわかりやすく書いてあるのが『伝え方が9割』なのだと思います。

佐々木 そのたとえを使わせていただくと、人って自分の「想い」が強すぎるから、それをそのまま伝えたくて、思い切りビュンって腕を振ってボールを投げてしまうけれど、その結果、ボールがバウンドしちゃって相手は受け止めきれない…というようなことが起こってしまう。それよりも、自分的には100%気持ちよく投げられなくても、相手のミットをきちんと見て、その中に投げることが「コミュニケーション」なんですよね。

森川 おっしゃる通り。でも、今本当にコミュニケーション下手な人が多いという印象を受けています。LINEをはじめ、SNSなどツールがどんどん進化している分、オフラインでのコミュニケーションが苦手になってきているのでしょうね。SNSではうまくコミュニケーションを取れていても、いざ、現実に相手に対面したら、どうボールを投げればいいかわからない人が多い。スタンプをリアルに投げるわけにはいかないですからねえ(笑)。

佐々木 確かに(笑)。

森川 友達同士のコミュニケーションもそうですが、親と子どもとか、先生と生徒とか、そういう関係性においてのコミュニケーション力の低下って、結構深刻な問題だと思っています。最近も、いじめ問題で「先生にSOSを出したのに」という例がありましたけれど、『伝え方が9割』の考え方がもっと広まれば、ビジネスや社会問題の解決にもつながるんじゃないかと考えています。

佐々木 おっしゃる通り、オフラインでのコミュニケーションの機会は減っているかもしれませんね。ただ、コミュニケーション自体の「総量」は増えているのではないかと。

森川 あぁ、そうですね、確かに。