伝え方ひとつで
「愛」が生まれます

森川「クリエーターズスタンプの活況ぶりを見ると、みんなやはり「想いを伝えたい」欲求が強いんだなとは思いますね。」

佐々木 小さな子どもを連れたお母さんの話なのですが、トラックがビュンビュン走っている大きな国道沿いを歩くとき、「危ないから、お母さんと手をつないで」というと、子どもは「いやだ!」と言う。でも、ある伝え方をしたら子どものほうから喜んで手をつないできた。…なんて言ったと思います?

森川 なんだろう…「自分が怖いから、手をつないで」とか?

佐々木 さすが!その通りです。「私が怖いから、手をつないでほしい」と伝えることで、子どもを大人扱いしたんです。「子ども扱いされるのは嫌だ」という、子どもの気持ちを汲んだんですね。手をつないであげた子ども側も、結果的に子どもと手をつなぐことができたお母さんも、どちらも嬉しい。これ、すごい話だなと思って。「相手のことを想像して伝える」ことができたら、双方がハッピーになれるんですよね。

森川 なるほど、伝え方ひとつで「愛」が生まれますね。

佐々木 …ちょっと脱線しますが、『伝え方が9割』っていうタイトルだけを見て、「口先だけで相手をだましてやろう」という本だと勘違いされることがあるんですよね(笑)。で、取材を受けるときに、相手が明らかに「論破してやろう」という雰囲気で臨んでくる。

森川 (笑)。しかも佐々木さん、コピーライターだから余計に誤解されそう。本を読めば違うってわかるのにね。

佐々木 ついこの間も、「佐々木さん、コミュニケーションで一番大切なものってなんだと思われますか?」と質問を受けまして。おそらく「テクニック」という答えを期待していたんだと思うんですが、僕が「愛です。どれだけ相手のことを考えられるか、に尽きます」と言ったら、「あ、愛?」と。彼が用意してきた質問が全滅になったみたいで、慌てておられました(笑)。

森川 愛を持って相手のことを考えるからこそ、いろいろな努力もするし、どういうボールを投げれば相手が捕りやすいか工夫を凝らせるのですよね。

佐々木『伝え方が9割』の中で、「7つの切り口」と「5つのツール」を紹介していて、これを使えば想いがスムーズに伝わり、プレゼンだろうが、デートの誘いだろうが、相手がYesという可能性が高まると記しているのですが、この発想ってちょっとLINEのスタンプに似ている気がするんですよね。言葉では伝わりにくいものが、スタンプ1個で伝えられてしまう。スタンプを見ていると、「そうそう、こういうことを伝えたいのよ!」というモノが必ずあるんですよね。

森川 作るときは、そこまで考えていなかったのですが(笑)、クリエーターズスタンプの活況ぶりを見ると、みんなやはり「想いを伝えたい」欲求が強いんだなとは思いますね。

佐々木 スタンプでもぜひ「愛」を持って伝えてほしいですね。LINE上が愛あるポジティブなスタンプであふれていると、見ているだけで気持ちいいですものね(笑)。

佐々木圭一(ささき・けいいち)
コピーライター/作詞家/上智大学非常勤講師 上智大学大学院を卒業後、97年大手広告会社に入社。後に伝説のクリエーター、リー・クロウのもと米国で2年間インターナショナルな仕事に従事。日本人初、米国の広告賞One Show Designでゴールド賞を獲得(Mr.Children)。アジア初、6ヵ国歌姫プロジェクト(アジエンス)。カンヌ国際クリエイティブアワードでシルバー賞他計3つ獲得、AdFestでゴールド賞2つ獲得、など国内外51のアワードを獲得。郷ひろみ・Chemistryの作詞家としてアルバム・オリコン1位を2度獲得。twitter:@keiichisasaki Facebook:www.facebook.com/k1countryfree HP: www.ugokasu.co.jp