背中で語っても、相手には
伝わらない時代になっている
佐々木 『シンプルに考える』の中で、東日本大震災を機に、「今求められているのはクローズドなコミュニケーションだ」と確信し、LINEの開発に着手したと紹介されていて、なるほどと思いました。震災後、皆があらゆる手段を用いて家族や親せき、友人の安否を確認しようとした。その際、SNSが力を発揮しましたが、一部のネットリテラシーが高いユーザーだけではなく、「誰もが使いこなせる、もっと便利なメッセージ・サービスが必要とされている」と感じ、3ヵ月後にはLINEをカットオーバーした、と。
森川 その通りです。2011年の6月。
佐々木 震災を機に、皆がコミュニケーションの大切さを痛感し、そしてLINEのスタートとともに「コミュニケーションの時代」が始まったと思っています。Facebook、Twitter、そしてLINEという便利なツールを使って、より周りの人たちとコミュニケーションを取るようになった。ただ、それまであまりコミュニケーションを意識していなかっただけに、自分のコミュニケーション下手を認識するとともに、「コミュニケーションの“取り方”が重要なのだ」という認識も生まれ始めているのではないかと考えています。
森川 なるほど、コミュニケーションに対する意識は変わりつつあるかもしれませんね。日本人はそもそも、コミュニケーションが苦手で、昔から「背中で語る」みたいな文化があった。でも、ダイバーシティが進み、グローバル化も進んでいる。これからは皆が意識して、互いの意見の違いをもっと伝え合うべきだと思いますね。
佐々木 昔は、背中で語っても、相手がちゃんと読み取ろうとしてくれたんですよね。でも、今はきちんと言葉で伝えないと、伝わらない時代になっている。背中を読み取ろうと努力する人がいない。
森川 コミュニケーションの総量は増えていて、伝え方の大切さに気付く人も増えてきた。…佐々木さんは、今後「コミュニケーション」はどう変わっていくと考えていますか?
佐々木 コミュニケーション手法は変わったとしても、本質は変わらないのではないかと思っています。今までも、そしてこれからも、「相手のことをどれだけ想像して伝えられるか」がカギになると思っています。
森川 なるほど。