ベンチャーキャピタルが
腕利きデザイナーを幹部に招聘
最近のシリコンバレーでの「デザイン」への注目度は、たとえば10数年前とは比べものにならないくらい高くなっている。
10数年前、おしゃれだったのはアップル製品くらいだろうか。それ以外のテクノロジー製品はおしなべて地味で、使い勝手も悪く、ともかく目的の機能さえ果たせばいいという感じだった。ウェブサイトなども同様で、見た目も使い心地もよくなかった。まだアプリなど存在していない時代である。
ところが、大成功を収めたアップルの影響もあるのだろうが、最近はデザインに意識的でなければ存在しないも同然、といった雰囲気になってきている。アプリのインターフェイスしかり、ウェアラブルのデザインしかり、ウェブサイトもますます洗練されている。それだけでなく、スタートアップが次々と作り上げている家庭用品やガジェットのデザインもスマートだ。何よりも、シリコンバレーで仕事をする人々がおしゃれになった。
この傾向は、何も上辺だけで起こっていることではないようだ。
それを示すのが、ベンチャーキャピタルがデザインの専門家を雇っているという事実である。
たとえば、トップクラスのベンチャーキャピタルのクライナー・パーキンズ・コーフィールド&バイヤーズ(KPCB)は、日系人デザイナーのジョン前田氏(上の写真)をパートナーに迎えている。前田氏は優れたグラフィックデザイナーで、MITメディアラボで教え、その後はロード・アイランド・スクール・オブ・デザインの学長を務めていた。
ベンチャーキャピタルにいきなり入って、最初は投資界の専門用語がわからなくて困ったと、同氏は言っていた。彼の仕事の1つは、スタートアップが成長していく中で早い時期にデザインが企業文化に根付くようにすることだという。ベンチャーキャピタルがスタートアップをサポートする方法は、ともかく加速度的にビジネスを拡大させて成長させることだが、その中でデザインが取り残されないようにしなければならないというわけだ。