いわゆる「お家騒動」で世間の注目を集めることとなった大塚家具。今年3月の株主総会を経て経営体制を一新し、新しい事業戦略を次々と推し進めた結果、2015年中間期の業績は赤字予想から一転、黒字を達成した。これまでメディアでは、創業家の確執ばかりがクローズアップされがちだったが、足元では同社の企業としてのポテンシャルにも注目が集まっている。実際の事業計画は今後どのような戦略の下で運営されるのか。大塚家具は確固たる成長軌道に乗ることができるのか。中期経営計画の実現度を大塚久美子社長に詳しく聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 小尾拓也、山出暁子)

新たな価値の提案で
市場は今後も成長する

――2015年中間期(1-6月)の業績は、前年同期と比べて減益となりましたが、従来の1億2600万円の赤字予想から一転、3億5900万円(単独・税引き)の最終黒字を達成しました。今年2月に大塚社長ご自身が発表された「中期経営計画」の見通しとも深く関わってくると思いますが、現在、足元の市場環境をどう見ていますか。

おおつか・くみこ
大塚家具 代表取締役社長兼営業本部長。1968年生まれ。埼玉県出身。一橋大学経済学部卒業。富士銀行(現みずほフィナンシャルグループ)勤務を経て、94年大塚家具入社。96年取締役就任。2009年3月代表取締役社長に就任。14年7月社長解任。15年1月社長に復帰、現在に至る。

大塚 家具は住宅需要とある程度連動します。住宅着工件数が一時期より減少していることや、2020年をピークに住宅ストック数も頭打ちになると言われていることから、家具の市場環境は厳しいという見方があります。確かに、新築住宅に関連した家具市場は大きいですが、一方で、すでに建っている住宅における家具の買い換え需要はもっと掘り起こすことができるのではないか、と。

 日本人は、生活を支える「衣」「食」「住」のうち、着るものや食べるものについてはかなり知識も経験も持っています。着るものに関しては、世界に通じるデザイナーも輩出されていますし、一般の人たちも自分に何が似合うか、何が着たいか、自分なりの考えを持つレベルにあります。食べるものについても、安全にこだわった高い質を重視したり、一方でワンコインでも美味しいものを楽しめたりする、そういう食文化に自信を持っていると思うんです。着るものと食べるものに関しては経験豊富で成熟している。

 ところが、住むことに関してはまだ未成熟。テレビ番組でもリフォーム、収納、片付けに関するものなど人気があるようですが、これは視聴者が「住まう環境をどうすればいいか」という問題意識を持っていて、まだ試行錯誤していることの表れだと思います。

 洋服をトレンドに合わせて買い換えていくように、家具も、確かにまだ使えるものだけど、ここを変えていったらもっと楽しい、もっと豊かな生活になるんじゃないか、という需要が出てくるはず。そうしたニーズに対応した提案をしていくことで、まだまだ市場は成長していくと思います。

――家具の買い取りといった「リユース」がビジネスモデルの変革における柱の一つになっているのも、そこへ向けての戦略であると。その先駆けとなる「のりかえ特割キャンペーン」(家具を最大10万円で下取りするサービス)も実施していました。

大塚 そうです。家具は一つあると二つ目はなかなか買えないですよね。変えたいと思ってもなかなか変えられない。かといって、まだ使えるのに捨てるのはもったいない。だからみなさん、我慢して使っていることが多いと思うんです。我慢して着たり、我慢して食べたりすることはもうあまりしなくなっているのに。

 そこで大塚家具は「捨てることに罪悪感があるならそれを活用できるようにしましょう」というソリューションとして、リユースを提唱していきます。住宅も、家族構成が変われば引っ越したり、リフォームしたりするように、家具も所有だけではなく活用していく。生活に合わせて住まいの環境を変えるには、家具こそやりやすい手段のはずなんです。

 そういう変わっていく需要に対して、新たな価値を提供していくために、私たちがどういう会社であるべきなのかを考えるのが、今後の重要な経営戦略だと思っています。

 そして、ただ提案しているだけではダメで、実際に見ていただかないと伝わらない。だから、提案が伝わりやすい店づくり、つまり、入りやすい店にしなくてはいけないということで、店舗のあり方も変わっています。