また、「パクリ」の危機は経営者レベルにも存在する。関連業界における新進気鋭の経営者ということで経営諮問委員会の委員に就任し、そのビジネスや収益モデルなどの重要情報を知ることになった経営者が、その後、手のひら返しでその業界に参入した。そしてビジネスの基本を踏襲しつつ、その企業の構造的な弱点を突いて大成功した、などという有名な話もある。昔は異業種で協働して情報を共有していたのに、いつの間にか競合になっていた……というのは、IT関連業界など、新しい業界ではよくある話なのである。

「悪質なパクリ」と「良質なパクリ」
両者を分ける違いとは?

 勘違いしてもらいたくないのは、私はすべての「パクリ」を問題視しているわけではないということだ。わかりやすいよう「パクリ」という単語を使っているせいで、ネガティブなイメージしかわかないかもしれないが、「良質なパクリ」「問題のないパクリ」というものも存在する。

 著作権のことを勉強すると必ず教わるのが、大ヒットミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』は、もともとシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を「パクッて」作られた、という話である。「どこが?」と思われた方は、物語の流れをよく思い返してほしい。

・主人公の少年と少女は対立する2つのグループに属している。
・ふたりは舞踏会で出会い、一目で恋に陥り、キスをする。
・ダンスの後、バルコニーで愛を確かめ、翌日ふたりだけで結婚式を挙げる(ふりをする)。
・少女には、周囲の決めた婚約者がいる。
・グループ同士の抗争のなかで、少年が少女の兄(従兄)を殺す。
・事件を知った少女は運命を呪うが、やがて少年との愛を貫く決意をする。
・逃亡中の少年は少女の許を訪れ、その後二人は結ばれる。
・駆け落ちを目論むものの、行き違いによって少年は死んでしまう。(*)

 基本のストーリーは、驚くほど似ているのである。しかも、この話にはまた続きがある。今、「本家」のように説明したシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』にさえ、アーサー・ブルックの詩物語『ロミアスとジュリエットの悲劇物語』という元ネタがあるというのだ。(*)

(*)『著作権とは何か―文化と創造のゆくえ』(集英社新書)から一部要約