中国が人民元の切り下げを発表して以降、世界の株式市場が大きく下落するなど混乱した相場が続いている。中国が人民元を切り下げても世界経済の需要のパイが変化するわけではなく、世界経済の先行きを悲観する必要はない。
ただ、これまで世界経済が中国の過剰投資に支えられてきた中、もはや中国が過剰投資により世界をけん引することがないと悟った株式市場の参加者が、期待リターンを引き下げると同時に株式を手放しているというのが現状だろう。
中国の人民元切り下げで世界経済は悪化しないが、その影響は小さくはない。同国はこれまでの過剰投資で維持されていた雇用を外需シフトによって保つと表明した格好である。輸出数量の拡大をもくろんでいる可能性が高い。通貨を切り下げ、輸出物価を切り下げることで輸出数量を拡大すれば、生産拡大を介して雇用の創出につながるが、そうなると、中国製品と競合する他国の輸出品の売り上げ減少は免れない。
これまで輸出が景気をけん引してきた国では、中国に追随する形での通貨安政策、具体的には利下げなどの金融緩和政策の必要性が生じよう。
そのような中、9月3日の欧州中央銀行(ECB)政策理事会の後の記者会見で、ドラギ総裁は、現行の量的緩和プログラムについて、延長や拡大の可能性があることを示唆した。
欧州債務危機からの脱却の代償として、ユーロ圏の失業率は12%を超える水準まで上昇し、そのことがまた欧州の景気を下押しした。消費者の信頼感回復のためには失業率引き下げが必須であり、そのためにECBはマイナス金利や量的緩和を導入し、外需と生産の拡大をもくろんできた。