中国経済の減速が世界の株式市場を揺さぶっている。上海総合指数の下落に引きずられ、日経平均株価は8月24日に前週末比895円安の大幅下落となり、米国やドイツの株式市場でも7~8%急落した。世界同時に起こったこの動揺は、新たな危機の幕開けなのか。(「週刊ダイヤモンド」編集部 大坪稚子)

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 ブラックマンデーの再来か。8月第4週は週明けから不気味な展開を見せた。日経平均株価は8月24日に900円弱も下落。同日のニューヨークダウ平均も一時1000ドル超の下落、欧州でもドイツ株式指数が8%の急落となった。

 世界的な金融市場の動揺の引き金になったのは、中国の景気減速で、ここにきてさらにその懸念が強まってきたからだ。

 電力消費量などの主要経済指標から、中国の成長鈍化はすでに明らかだったが、「唐突な人民元の切り下げや天津の爆発事故などで、投資家が中国当局に不信感を持った」(門司総一郎・大和住銀投信投資顧問経済調査部長)のである。

 人民元の切り下げについては、事実上ドルにペッグ(連動)して上昇してきた人民元を市場の実勢に合わせたという点で評価する見方もあるが、「なりふり構わず人民元安に誘導して輸出競争力を高めなければならないほど中国景気は悪いのか」とネガティブに受け取る向きが多く、不安を増幅させる結果となった。

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 中国政府はこうした不安を払拭しようと、8月25日には預金準備率と基準金利を同時に引き下げる金融緩和を発表した。これを受けて、日米欧の株価は下げ止まりつつあるものの、大きく下落する前の水準まで戻してはいない。お膝元の上海総合指数は、6月中旬に5000ポイントの大台を付けて以降下げ止まっておらず、8月26日には3000ポイントを割り込んでいる。

 金融緩和に踏み切ってもなお、中国経済に対する懸念が拭い去れないのは、米国の利上げが近いのではないかという観測があるからだ。先述したように人民元は事実上ドルにペッグしているため、米国の利上げはドル高とともに人民元高を招き、輸出競争力の低下につながる。そうなればさらなる景気減速は避けられない。だからといって一方的に人民元を切り下げれば、後述するように新興国経済に大きな打撃を与えることになる。