営業本格化の直後だった

 GSKは、1錠当たり(1日分)の薬価が996・5円と高収益を期待できるこの新薬について、5月から本格的な営業攻勢をかけていた。新薬には発売後1年間は投与制限があり、その縛りが解けたからだ。市場をほぼ独占してきたバラクルードを相手に短期間でシェア1割弱へと急伸していた。その直後の事故だったのだ。

 テノゼットはバラクルードと同様、毎日1錠を原則として欠かさず飲み続けなければならない。飲み忘れや服用の中断が、耐性化や病状悪化を招く恐れが指摘されているため、供給の停止は患者にとって死活問題となる。

 現在、新規患者への処方を取りやめ、すでに処方されている患者には処方量を減らす措置が取られているが、問題が長期化すれば、影響の拡大は不可避だ。

 埼玉医科大学病院の持田智教授は「(テノゼット処方患者の)大部分は、バラクルードに切り替えられる。妊娠中や(GSKの別の抗HBV薬である)『ヘプセラ』の耐性患者は、テノゼットを入手できないと困ることになる」と指摘する。

 GSKにとっては不運なもらい事故。だが、製薬という人命や健康に関わる領域だけに、他の製薬会社を含めて、生産体制の在り方をあらためて問われよう。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 宮原啓彰)