爆発発生から4日後に現地入りした李克強首相。対応しているという国民へのアピールもあるだろうが、犯人探しをしている節もある Photo:REUTERS/アフロ

中国の首都・北京に隣接する直轄市・天津で突如発生した爆発事故。大量の化学薬品など危険物が保管されていた事故現場付近には、自動車や電子通信など日系企業の拠点も少なくない。依然として収束の見通しが立たない事故の状況を追った。(「週刊ダイヤモンド」編集部 池田光史)

 中国・天津市で8月12日に起きた爆発事故は、中国全土を震撼させたに違いない。爆発地点には直径100メートル規模の巨大な穴が開き、さながら“クレーター”が突如出現したかのようである。

 大規模な爆発は、人々が寝静まった夜の11時半ごろ、世界4位の貨物取扱量を誇る天津港近くの化学薬品保管倉庫で発生した。天津市当局の発表によると、19日時点で死者は114人、行方不明者は57人。負傷者数に至っては700人以上に上っている。

 事故の詳細については本稿執筆の8月19日時点で依然不明な部分が多いものの、現地報道等によれば、倉庫で火災が発生し消防隊が駆け付け、水に反応すると引火しやすい化学薬品(シアン化ナトリウム)に放水を続けた結果、2度の爆発が起きたもようだ。いわば“人災”ということになる。

 経済的な損失もすでに発生している。天津港は主に自動車や鋼材、石油化学などの輸出入を取り扱う港湾施設だ。現場の周囲では、輸入車も大量に焼け焦げた。

 その数、仏ルノーの車両約1500台、韓国・現代自動車グループの約4000台、一汽大衆(独フォルクスワーゲンの合弁)の2748台……。これらの車は主にハイエンドモデルで、損失金額は台数以上のインパクトがある。

 被害を受けたのは輸入車だけではない。爆発現場からわずか約2キロメートルしか離れていない生産拠点を持っていたのが、中国・第一汽車集団と合弁でカローラなどを生産しているトヨタ自動車だ。

 同社は19日、当初3日間(17~19日)を予定していた天津2工場の稼働停止期間について、22日まで延長することを決めた。社屋自体の被害は窓ガラスの破損など限定的なようだが、現場周辺は立ち入り制限がかけられており、詳しい状況が見えないままだからだ。他の日系企業も、多かれ少なかれ同じような状況にある。